「牧野さん、マガジンラックにあったガイド、雑誌、書籍全部なくなりました」 実はリニューアルを計画している時にも多少の紛失は予想していたのだが、いちいち雑誌や書籍にまでホテル名をつけるのは、図書館みたいで野暮だからということで目をつぶっていたのだが、まさか1週間で全滅とは。 これはもう確信犯だ さらに翌週には花瓶に挿してあった若竹が全部なくなるという事態に発展した。いったいどうやって持ち出すのだろうか。お客様みんなに喜んでもらおうとホテルスタッフがお寺に行って譲り受けてきた若竹だというのに。これはもう確信犯だ。 数週間後、さらに私を驚愕させる報告があった。 「牧野さん、花瓶が割れてます」 あまりの持ち帰りの多さに困惑した私たちは、今度は花瓶があぶない、ということで実は花瓶の底を接着剤で棚に固定しておいたのだ。その花瓶が割れている。 おそらく、お客様は(この際どろぼう様といったほうがよいのかも