人間の安全保障の理論と実践――「誰も取り残されない社会」の実現に向けて 宮下大夢 国際関係論、平和・紛争研究、国際協力論 国際 #安全保障をみるプリズム 「人間の安全保障」(human security)という概念が公の場に登場してから四半世紀が経過した。「人間の安全保障」とは、国境を越える多様な脅威から人間一人ひとりの生存、生活、尊厳を確保するための実践に関する規範的な概念の一つである。国際協力や開発援助に関わる人々にはよく知られているが、初めてこの言葉を耳にする人にとっては分かりにくい概念であろう。 しかし、この四半世紀の間に、「人間の安全保障」の理念は国際機関、国家、市民社会・非政府組織(NGO)といったグローバル・ガバナンス(注1)を担う多様なアクター(主体)に受け入れられ、国際協力、開発援助、平和構築、人道支援などの分野で実践されるようになった。学術的にも、「人間の安全保障」に関