2023年6月24日 曹峰 『中国古代「名」的政治思想研究』 上海古籍出版社, 2017年 評者:河合 一樹 Tokyo Academic Review of Books, vol.57 (2023); https://doi.org/10.52509/tarb0057 はじめに 本書はその題目の通り、中国古代の思想を主題とするものであり、具体的には先秦のいわゆる諸子百家の時代における「名」の問題を扱うものである。それに対して、評者の専門は日本近世思想史であり、主に江戸時代の儒学や国学などについてこれまで研究してきた。日本思想を扱うにあたっては中国思想を踏まえることが不可欠であるとはいえ、中国思想について高度に専門的な知識を有している訳ではない。それにもかかわらず、何故本書を取りあげようとするのかということを最初に述べておいた方がよいだろう。 評者が本書を読んだのは、自らの江戸時代について