「現実世界と伝承世界を二重写しにすることで、奥多摩の世界が立体的に立ち上がり、何気ない山間の景色は突如フルカラーに変貌する」(『奥東京人に会いに行く』60ページ) 日本全国、世界各地の祭りや伝統音楽を追いかけてきたライター大石始が10月に上梓した『奥東京人に会いに行く』は、西端は奥多摩の集落、東端は江戸川区の東葛西、さらに絶海の孤島である青ヶ島など、まさに東京の奥地に焦点を当て、そこに住む人々との会話を通して、その地域固有の文化・習慣をルポ形式でつづったものだ。上記に引用したのは、本文からの一節である。 日々の暮らしのなかにエキゾチックを見出す 常に東京の外にあるものを追いかけてきた大石が、ここにきて「東京の奥」に目を向けたのは、一種の回帰だったという。 「僕は数年前から各地の盆踊りや祭りの取材を続けていて、徐々にマニアックなものが対象になってきて。取材に出かける場所が東京から離れていった