この本では、掲題の通り、三島由紀夫と、二・二六事件の関係を中心に、さまざまな角度から、論じられている。内容豊富であるが、新書で、薄く、さっと読めてしまう。 三島由紀夫と北一輝。この二人の特徴を考えたときに、ある一つの傾向を、この本では指摘している。両方とも、天皇の、日本国家における重要性を、これ以上ないくらいに強調していながら、ある種の、自分と天皇を同列に置くような視座をもっていたというのだ。 寺田は、「革命児・北一輝の逆手戦法」に、北の言葉を次のように記している。/「僕は支那に生れていたら天子に成れると思った」/北は大正十三年のころ、みずから天子を意味する「龍尊」という号を用いていた。いずれにしても、日本の天皇をみずからのライバル視するような、そういう不遜な感情をいだいていたのである。 三島は『仮面の告白』に、祖母夏子(旧姓・永井)のことを「十三歳の私には六十歳の深情の恋人がいたのであっ