第二次世界大戦が起きる前のアジアは、タイ国と日本を除いてはすべてが欧米列強の植民地であった。彼らの植民地統治が如何なるものであったかは戦後の日本人にはほとんど知らされていないが、戦前の日本人は欧米に侵略され続けてきたアジアの歴史について解説されている本はいくらでも存在した。しかしながら、そのような史実は戦勝国にとっては不都合な真実であり、そのような歴史叙述を戦後の日本人に読めないようにしたことは、焚書処分された書物のタイトルからほぼ見当がつく。 今回は昭和十三年に発刊された『大東洋の危機 : 英国よアジアより手を引け』の一節を紹介したい。 英国が日本掣肘を目的とするならば、太平洋作戦策源地としてのシンガポール、並びにその前線根拠地としての香港は、何等日本を脅威し得るに足るものではなく、かえって英国を自縄自縛せしむる二触角としての意義を示すに過ぎないものである。 冷静を誇る英国が、この明かな