『OUT』『グロテスク』など社会に顧みられることのない女性たちと、その“痛み”を圧倒的な筆力で浮かび上がらせてきた作家・桐野夏生さん。最新作『燕は戻ってこない』では女性の貧困と生殖医療を題材にし、相次いで女性誌の特集が組まれています。人や物事をひとくくりにする「『安易なラベリング』に抵抗するために仕事をしている」と語る桐野さん。単独インタビューで、桐野さんが見据える現代社会と“痛み”に迫りました。
作家・ジャーナリスト団体の本格的取り組み 芥川賞を受賞した『ハンチバック』作者・市川沙央さんの告発は衝撃だった。 これまで障害者の問題にはいろいろ関わってきたつもりだったが、私たちが読書という営みから障害者を排除し、しかもそのことに全く無自覚だという告発は、「目からうろこ」でもあった。 この告発を受けて、私が所属する日本ペンクラブの言論表現委員会で、読書バリアフリーの問題に取り組むべきではないかという意見が出て、この何カ月か、日本文藝家協会とも話し合いを重ねてきた。そして、いよいよ11月20日(月)、日本ペンクラブの会議室に桐野夏生会長や文藝家協会の三田誠広・副理事長らが顔を揃え、市川さんもオンラインで参加するという試みを行うことになった。その一部始終はYouTubeで配信を行うので、ぜひ多くの人に視聴してほしい。 ペンクラブでは今、日本推理作家協会にも呼びかけを行っているが、作家・ジャー
1933年の焚書1933年(昭和8年)5月10日、ベアリーンの歌劇場広場(Platz am Opernhaus)で、民界社会主義ドイチュン学生協会(Nationalsozialistischen Deutschen Studentenbunds)の成績優秀な大学生たちがエーリヒ・ケストゥナー(Erich Kästner、1899年2月23日~1974年7月29日)の著書を含む有害書の焚書をおこなった。 2023年(令和5年)8月10日、京都で、松井健人(1992年~)著『教養・読書・図書館:ヴァイマル・ナチス期ドイツの教養理念と民衆図書館』(晃洋書房、本体3,500円)が刊行された。 カバー表紙に、1933年(昭和8年)5月10日、ベアリーンでの焚書の写真が使われた。 2000年の『人間の汚点』1998年(平成10年)9月27日、ウェブ検索エンジンのGoogle Serchがウェブ検索サー
オパールの炎 作者:桐野夏生 中央公論新社 Amazon 桐野夏生のインタビューを読んだことをきっかけに、ずっと読みたいと思っていた「オパールの炎」を読んだ。 一気読みしてしまった。 桐野夏生の作品は、何よりまず創作として抜群に面白い。先が気になって、読み終わらないと本が置けない。 「オパールの炎」は五十年前に、中絶を禁止した法律に反対しピル解禁を求めた、女性活動家・榎美沙子(小説では塙玲衣子)をモデルにしたセミフィクションである。 塙に興味を持ったライターの女性が、かつて塙の周りにいた人たちにインタビューをしていく形式で話は進む。 「塙玲衣子」は五十年前は有名だったものの、消息が絶えてから長い時間が経っている。 多くの人は関心も記憶も薄れている。 インタビューを受ける人たちは、性別、年代、学歴、生きてきた環境、性格、物の考え方、塙との関わりかたなどすべてが違う。 思い出して懐かしむ人もい
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く