釘をほとんど使わない四階建ての木造建築 長野県北部、志賀高原の麓にある渋温泉は、1300年前に行基が発見したと伝わる歴史のいで湯。戦国時代には武田信玄の“隠し湯”として守られ、江戸時代には善光寺と群馬県草津温泉を結ぶ街道の宿場町として栄えた。 「歴史の宿 金具屋」は江戸時代中期、1758年(宝暦8年)の創業。松代藩の脇本陣として利用された。もとは鍛冶屋を営み、この名があるという。 石畳の温泉街を歩く誰もが立ち止まり、仰ぎ見るのが、金具屋の木造四階建ての宿泊棟「斉月楼(さいげつろう)」だ。威風堂々たる佇まいは圧巻。八間半(約15m)の杉の通し柱13本を立て、釘はほとんど使わず木の組み合わせで造られている。各階異なる意匠も見応えがある。宮崎駿監督のアニメ『千と千尋の神隠し』に登場する湯屋の、建築様式の参考モデルとして世界から話題を集める宿だ。