以前、グレッチェン・パーラトの編集盤がリリースされたとき、僕は 「グレッチェンの声が聴こえるところに行けば、そこにはいつも新しいジャズが鳴っている。」とコメントを寄せた。 2010年代に開花したハイブリッドなジャズの文脈において、「声」=ヴォーカリストの重要性が語られることは多いが、その中でグレッチェンの存在感は絶大だった。グレッチェンが起用されているアルバムを探して、そこに参加しているミュージシャンを追っていけば、2010年代のジャズの面白いところをまとめた見取り図が出来上がるような感覚があったほどだ。だから僕は彼女の名前を日々探していた。 そんなグレッチェンは2011年の『Lost and Found』以降、スタジオ録音のアルバムを発表していなかった。 マーク・ジュリアナとの間に生まれた2人の子供を育てながらも、世界中でライブを行ってはいたし、ライブ盤のリリースもあったし、他のアーティ