2016年の大統領選挙戦以降、「ポスト・トゥルース」「フェイクニュース」「オルタナファクト」といった語が飛び交うようになった。オックスフォード辞書が2016年を代表する一語に 「ポスト・トゥルース(post-truth)」 を選出したことについて、リー・マッキンタイア(Lee Mcintyre)はその著書『ポスト・トゥルース(Post-Truth)』(2018年、未邦訳)の中で、2015年から語の使用率が2000%も急増した事実に鑑みて妥当だと述べている (Mcintyre 1)。 それでは「ポスト・トゥルース」とは何を示す語なのだろうか。千葉雅也は「ポスト・トゥルース」とは真理をめぐる諸解釈がなくなった後に揺らぐことのない事実と事実が衝突する状況だと『意味がない無意味』の中で述べている。 ポスト・トゥルースとは、ひとつの真理をめぐる諸解釈の争いではなく、根底的にバラバラな事実と事実の争い