毎回主人公が入れ替わる、連作短編集。 各章を追うごとに、その関係性が明らかになって来る。 作品舞台は、近未来で、火星移住者がいる時代。 といっても、地球での暮らしは今とほぼ変わらずで、読んでいて違和感はなく、主人公たちの悩みも普遍的だ。 主な登場人物は、中高年である雄大。(この時代、雄大など若めの高齢者は「成熟者」と呼ばれている。) 雄大と同じマンションに住む、母子の輝と龍。 輝が公園で友達になる同じく4歳の、トラノジョウ。その母親ユキ。 画家として成功して親や世間から認められたかった、孤独を抱える博士、ほか。 主人公たちが、何かの思いを「あきらめる」ことによって、また新たな気づきを手に入れることが出来るような物語。 読後感がとても爽やかで余韻が残り、出合えて良かったと思える小説だった。 「あきらめる」という言葉は、古語は「あきらむ」といわれ、「明らかにする」が語源だったそう。平安時代では