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  • 高橋幸宏 音楽の歴史 | ele-king

    高橋幸宏は1952年6月6日、東京で生まれた。父は会社経営をしており、自宅は200坪の敷地に建ち(もともとは天皇の運転手が建てた家だそうだ)、軽井沢には別荘を持っていた。 後に音楽プロデューサーとなる兄に感化され、早くから音楽に親しみ、小学生のときにはドラムを始めている。このドラムという楽器を選んだ理由にはドラムの練習ができるほど広い家に住む子がなかなかいないからだったと後年明かしている。 中学生のときにはユーミンが参加することもあったバンドを組み、高校生のときにはもうセッション・ミュージシャンの仕事を始めていたのだから早熟と言うほかないだろう。ドラムのうまい高校生がいるという噂を聞きつけて大学生だった細野晴臣が会いに来たのも高橋幸宏の高校時代のこと。大学に入るとガロに一時在籍するなど、すでにプロのミュージシャンとしての道も歩き始めていた。 そんな高橋幸宏の転機となったのは、旧知の加藤和彦

      高橋幸宏 音楽の歴史 | ele-king
    • exclusive JEFF MILLS ✖︎ JUN TOGAWA | ele-king

      子どものころTVを観ていたら「宇宙食、発売!」というコマーシャルが目に入った。それは日清食品が売り出すカップヌードルのことで、びっくりした僕は発売初日に買いに行った。ただのラーメンだとは気づかずに夢中になって食べ、空っぽになった容器を逆さまにして「宇宙船!」とか言ってみた。カップヌードルが発売された2年前、人類は初めて月面に降り立った。アポロ11号が月に降り立つプロセスは世界中でTV中継され、日本でもその夜は大人も子どももTV画面をじっと見守った。翌年明けには日本初の人工衛星が打ち上げられ、春からの大阪万博には「月の石」がやってきた。秋にはイギリスのTVドラマ「謎の円盤UFO」が始まり、小学生の子どもが「宇宙」を意識しないのは無理な年となった。アポロが月に着陸した前の年、『2001年宇宙の旅』が1週間で打ち切りになったとはとても思えない騒ぎだった。 ジェフ・ミルズが2008年から継続的に続

        exclusive JEFF MILLS ✖︎ JUN TOGAWA | ele-king
      • ♯2:誰がために音楽は鳴る | ele-king

        平日の朝の9時台の渋谷行きの電車のなかといえば、そりゃあもう、その1時間前よりは空いているため多少はマシだが、それでもまだ混んだ車内は最悪な雰囲気で、ゲームやメルカリやYouTubeやなんかで時間を潰す勤め人や学生、座席に隙間なくそれでも眉間に皺を寄せた人たちは居心地悪そうに座り、たまにいびきをかいている輩もいると。まあ早い話、幸せとは思えないような人たちでいっぱいだ。だからそんななか、音楽を聴きながらステップを踏んでかすかとはいえ歌まで歌っているうら若き女性がいたら、周囲が視線を寄せるのも無理はない。ただし、そう、怪訝な目で。 たまたま偶然、彼女はぼくのすぐ前にいた。電車が動いているうちはまだいいが、停車し、ほんの数十秒の静けさが車内に訪れると彼女が歌っているのがはっきりとわかる。聞こえた人はそこで「ん?」と思う。ドアが閉まり、電車ががーっと音を立ててまた走りだすと人びとは手元のスマホの

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        • R.I.P. 鮎川誠 | ele-king

          連日レジェンド級のアーティストたちの訃報が続き、堪えるなと思っていたところへまたひとり……シーナ&ロケッツの、そして日本を代表するロックンロール・ギタリストの鮎川誠が1月29日午前5時47分(シーナ!)に亡くなった。享年74歳。日本中のロックンロール・ファンがいま、悲しみに暮れている。 昨年5月に膵臓がんで余命5ヶ月を宣告されてからも「一本でも多くライヴをしたい」とツアーを続け、近年ではもっともライヴの多い一年になったという。最後までロックとライヴにこだわった生涯だった。 11月にはシーナ&ロケッツ45周年ワンマンを新宿ロフトで行った。ライヴ中にウィルコ・ジョンソンの訃報が入り、「ウィルコの分までロックするぜぃ!」と叫ぶ姿がYouTubeに投稿されている。 そんなウィルコ・ジョンソンやイギー・ポップといった鮎川とも交流のあったアーティストたちと同様に、鮎川はパンク以前とパンク以後、メジャー

            R.I.P. 鮎川誠 | ele-king
          • Aphex Twin | ele-king

            最近父を亡くしたというエイフェックス・ツインことリチャード・D・ジェイムスが、どうやら昨今の状況に危機感を覚えたようで、めずらしく警告を発している。RA の報じるところによれば、当初 SoundCloud の user18081971 のプロフィール欄にメッセージがポストされ、一度削除された後、現在は Reddit に再掲載されている。とても良いことを言っているので、以下に試訳を掲げておきます。 現在悲しみに暮れている方々には心からお悔やみ申し上げます。ぼくは最近父を亡くしました。本当につらかったけど、COVID-19 とは無関係でした。 もし COVID-19 の統計を目にすることがあったら、その数値が COVID-19 “が原因で” 亡くなった人たちを反映しているのかどうか、ちゃんと確認しなきゃいけないよ。どうか忘れないでほしい。 もし警察が、きちんとした法もないような状態で政府の要望

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            • 2021年7月26日 | ele-king

              ここ10日ほどずっと気が重いのは、もちろん小山田圭吾について考えているからだ。そもそもオリンピック開催に反対のぼくが、小山田圭吾がそれに関与したということに失意を覚えないはずがなく、また、問題となった二誌の記事の内容に関しても、一次資料に当たったわけでないが、ネットで明らかになっている部分だけ見ても擁護しようがない。自分自身のふがいなさも痛感している。音楽シーンにはぼくのようにROとQJを読まない人だっているわけだし、ぼくの仕事は人格をチェックすることではない。とはいえコーネリアスの特集号を2冊も作っているのだから、これらの記事に目を通し、これはいったい何だったのかを本人に問い、語らせるべきだった。下調べが徹底していなかったという批判はあって然るべきだ。 ぼくが小山田圭吾と初めて会話したのは、1999年のたしか夏も終わりの頃だったと思う。きっかけは『ファンタズマ』だ。エレクトロニック・ミュ

                2021年7月26日 | ele-king
              • ジョン・コルトレーン、エリック・ドルフィーを迎えたセックステットの1961年8月のアーカイヴ音源 | ele-king

                1961年8月ニューヨークはヴィレッジ・ゲイト、ジョン・コルトレーン・セクステット(エリック・ドルフィー含)完全未発表ライヴ音源発掘。そんな令和一大ジャズ・ニュースに触れて「待ってました」と色めき立つ人が、はたしてどれくらいいるだろうか。狂喜する往年のジャズ・ファンを横目に、それがいったいどれほどの意味を持つことなのかよくわからぬまま、とりあえず様子を見るか、あるいはすぐに忘れてしまうか、ようするに大して関心を持たない人たちが大勢目に浮かぶ。そんな諸兄諸姉に対して説得力のある何事かを訴えるのはなかなか難しそうであるし、かといって往年のジャズ好事家諸賢にとり為になるような何事かを私なんぞが書けるはずもなく、さて。 ともあれいまさら基本的な情報は不要であろう。なにしろいまや岩波新書の目録にその名を連ねるほどの歴史的偉人である。その岩波新書赤版1303『コルトレーン ジャズの殉教者』の著者であり

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                • 坂本龍一 - 12 | ele-king

                  内田 学(a.k.a.Why Sheep?) 坂本龍一とは何者なのだろう。アーティスト・芸能人・文化人・社会運動家、そうだ、俳優であったことさえある。たしかにそれらのどの側面も彼はもっている。だが、どれも坂本の本質を真っ向から言い当てていないように思う。 では彼の紡ぎ出す音楽は、サウンドトラック・現代音楽・大衆音楽・民族音楽のどこに位置するのか、たしかに、そのどの領域にも踏み込んでいる、やはり坂本龍一はただただ音楽人なのだ、と、いまさらではあるが、この『12』を聴いて痛感した。アーティストという漠然としたものではなく、彼の血、肉、骨、細胞に至るまで、音楽を宿しているのだ。 音源の資料に添えられた坂本龍一本人の短いメモには、音による日記のようなものと自らこのアルバムを評している。実際、そうなのだろう、収録曲のすべてのタイトルも日付のみ付されている。まるで記号のように。それは大きな手術を経て、

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                  • 映画とドラマで学ぶイギリス史入門 | ele-king

                    古代からエリザベス女王まで、知ってるようであまり知らないイギリスの歴史を人気の映画やドラマから楽しく学べる一冊! 百年戦争とバラ戦争が舞台の「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」 20世紀初頭の貴族と使用人の生活を描いた「ダウントン・アビー」 第二次大戦中の兵士救出作戦「ダンケルク」 エリザベス女王の人生をドラマ化した「ザ・クラウン」など、 人気の映画やドラマをもとにイギリスの歴史が学べます。 これ一冊でイギリス映画/ドラマがもっと面白くなる! 目次 はじめに 序章 英国の概要 第一章 古代のイギリス 1. ローマ侵攻 『第九軍団のワシ』 2. アングロ・サクソンとアーサー王 『キング・アーサー』 3. ウェセックス朝対ヴァイキング 『ラスト・キングダム』 コラム 数奇な運命をたどった女性その1 エマ・オブ・ノルマンディ 第二章 中世のイギリス 4. ノルマン征服とノルマン朝 『1066 ザ・バ

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                    • R.I.P. Yukihiro Takahashi | ele-king

                      MOST READ interview with Sleaford Mods 賢くて笑える、つまり最悪だけど最高 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー (interviews)Columns 創造の生命体 〜 KPTMとBZDとアートのはなし ①アーティストと薬 (columns)Gina Birch - I Play My Bass Loud | ジーナ・バーチ (review)OZmotic & Fennesz - Senzatempo | オズモティック (review)interview with Kid Koala カナダのベテラン・スクラッチDJ、久びさにターンテーブルが主役のアルバム | キッド・コアラ、インタヴュー (interviews)Cornelius ──2023年、私たちはあらためてコーネリアスと出会い直す。6年ぶりのニュー・アルバムとともに (news)R.

                        R.I.P. Yukihiro Takahashi | ele-king
                      • Lee Perry | ele-king

                        リー・ペリーの初来日は1992年6月、バックバンドは当時の〈ON-U〉が誇るダブ・シンジケート(スタイル・スコットにスキップ・マクドナルド、そしてルーベン・ベイリー)だった。忘れられないライヴのひとつだが、ぼくはその来日時に編集者として取材にも立ち会っている。インタヴューの最後にライターは「日本のルード・ボーイ、ルード・ガールにメッセージをお願いします」という申し出をした。記事の締めとして「俺も昔はルード・ボーイだったんだよ」みたいな共感を喋って欲しかったのだろう。しかしペリーはじつにシンプルに、笑みを浮かべてこう答えた。「良い子になりなさい」 それから30年近く過ぎたいまでもぼくはこの答えが忘れられないでいる。 8月29日、リー・“スクラッチ”・ペリーはジャマイカの病院で息を引き取った。85歳だった。死因はまだ明らかにされていない。 1936年にジャマイカのケンダルで生まれ、1961年に

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                        • The KLF──映画『暗黒時代へようこそ』 | ele-king

                          元旦からサブスクを開始したKLFだが、今度は彼らの映画が公開され、話題だ。タイトルは『Welcome to the Dark Ages(暗黒時代へようこそ)』、彼らのピラミッド建設計画のドキュメンタリーとなっている。 どういうことか説明しよう。KLFが音楽業界を去り、100万ポンドを燃やしてから23年後、ビル・ドラモンドとジミー・コーティはふたたびタッグを組むことにした。しかしそれはポップ・グループとしてではなく葬儀屋としての新しい取り込みで、具体的には死者の灰を含む23グラムの34952個のレンガによってリヴァプールに巨大な人民のピラミッド(People's Pyramid)を造ること──。 彼らが100万ポンドを燃やした1994年8月23日からちょうど23年後となった2017年8月23日0時23秒のことである。60を過ぎた白髪のふたりは、改造したアイスクリームバンを運転し、リヴァプール

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                          • R.I.P. Manuel Göttsching | ele-king

                            ベルリン市内の、わりと街中の古いアパートメントの一室だったマニュエル・ゲッチングの家を訪れたのは、1995年7月のことだった。「外が騒がしくて申し訳ないね。ちょうどこの週末はラヴパレードをやっているから。ふだんのベルリンはもっと静かなんだけどね」と彼は苦笑しながら、日本から取材にやって来た数名を部屋に迎えい入れてくれた。「いや、ぼくらはそのラヴパレードのためにベルリンに来たんです」と正直に即答できなかったのは、それをあまり良きモノとは捉えていないのであろうゲッチングの表情を見てしまったからである。言うまでもなく当時彼の作品を強烈に欲していたのは、ラヴパレードの根幹にあるハウス/テクノの聴衆だったのだけれど。 すでにこの頃、ハウス/テクノの文脈で再評価された70年代以降のドイツのロックはいろいろあった。『フューチャー・デイズ』や『ゼロ・セット』、クラスターやハルモニア、初期のポポル・ヴーやタ

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                            • 元ちとせ | ele-king

                              ──坂本慎太郎、ティム・ヘッカー、坂本龍一らの参加したリミックス盤を紐解く 文:松村正人 Nov 28,2019 UP 私は元ちとせのリミックス・シリーズをはじめて知ったのはいまから数ヶ月前、坂本慎太郎による“朝花節”のリミックスを耳にしたときだった、そのときの衝撃は筆舌に尽くしがたい。というのも、私は奄美のうまれなので元ちとせのすごさは“ワダツミの木”ではじめて彼女を知ったみなさんよりはずっと古い。たしか90年代なかばだったか、シマの母が電話で瀬戸内町から出てきた中学だか高校生だかが奄美民謡大賞の新人賞を獲ったといっていたのである。奄美民謡大賞とは奄美のオピニオン紙「南海日日新聞」主催のシマ唄の大会で、その第一回の大賞を闘牛のアンセム“ワイド節”の作者坪山豊氏が受賞したことからも、その格式と伝統はご理解いただけようが、元ちとせは新人賞の翌々年あたりに大賞も受けたはずである。すなわちポップ

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                              • interview with Terre Thaemlitz | ele-king

                                Home > Interviews > interview with Terre Thaemlitz - 移民、ジェンダー、クラブ・カルチャーと本質主義への抵抗 このインタヴューは来年に延期されたテーリ・テムリッツ氏が出演予定のドイツの都市モンハイムで開催される音楽フェスティヴァル、《Monheim Triennale》から依頼を受け、英語でインタヴューをおこない執筆したものに若干の編集を加え日本語にしたものです。日本で20年、外国人でクィアで反資本主義なアーティストとして活動しているテーリさんの深い考察は、日本の人たちにこそいま読まれるべき示唆に富んでいます。 DJスプリンクルズとして知られるテーリ・テムリッツは世界を見渡しても、最も進歩的な芸術・音楽家たちのなかでさえも、極めてユニークな立場にある人物だ。批評性というものに深く向き合うことを決意している彼女は、あらゆる先入観や前提を疑う

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                                • interview with 『映画:フィッシュマンズ』 | ele-king

                                  『映画:フィッシュマンズ』がいよいよ上映される。映画ではバンドの歴史が語られ、ところどころその内面への入口が用意され、そして佐藤伸治についてみんなが喋っている。3時間ちかくもある長編だが、その長さは感じない。編集が作り出すリズム感が音楽と噛み合っているのである種の心地よさがあるし、レアな映像も多かったように思う。また、物語の合間合間にはなにか重要なひと言が挟み込まれていたりする。要するに、画面から目が離せないのだ。 フィッシュマンズは、佐藤伸治がいたときからそうだが、自分たちの作品を自己解説するバンドではなかった。したがって作品解釈には自由があるものの、いまだ謎めいてもいる。レゲエやロックステディだけをやっていたバンドではないし、なによりも世田谷三部作と呼ばれる問題の3枚を作ってしまったバンドだ。いったいあれは……あれは……佐藤伸治があれで言いたかったことは何だったのだろうか。だから膨大な

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                                  • interview with Trickfinger (John Frusciante) | ele-king

                                    バンドを脱退していた時期でさえ多くのひとにとって彼は「レッド・ホット・チリ・ペッパーズ(以下 RHCP)のジョン・フルシアンテ」だっただろうし、バンドの最高傑作との呼び声も高い『Californication』に豊かな叙情をもたらしたギタリストであっただろう。だからこそ、先日発表されたバンドへの復帰のニュースは古くからのファンを中心として熱狂的に受け止められたし、やはりスタジアム・バンドのメンバーとして再びギターを鳴らす彼の姿を見たいというのが人情だ。 けれども彼のソロ活動をつぶさに追っていたリスナーは、フルシアンテが優れたエレクトロニック・ミュージックの作り手であることを知っている。過去のソロ作ではギター・ミュージックにエレクトロニックの要素を導入することもあったが、とくにトリックフィンガー名義を使ってからは、アシッド・ハウスやIDMのような純然たるエレクトロニック・ミュージックに集中し

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                                    • グラミー賞がワールド・ミュージックというカテゴリーを止めました | ele-king

                                      数日前グラミーは、これまで「ベスト・ワールド・ミュージック」アルバムと呼んでいたカテゴリーを止めて、あらたに「ベスト・グローバル・ミュージック」アルバムと呼ぶことにすると発表した。理由は「ワールド・ミュージック」なるタームにリンクする植民地主義的な意味合いにある。グラミーによれば、「真にグローバルな考えを取り入れるための変更であり、世界中のアーティスト、民族音楽学者、言語学者たちとの協議のすえの結論である」とのこと。もともと「ワールド・ミュージック」なるタームは1987年に非西欧音楽を売るためにイギリスで考案されている。それはそれで非西欧の音楽を広めるのに役にたったのは事実だろう。グラミーも1992年からこのカテゴリーを設けていたが、その根底にはともすれば「西欧(主に英米)近代とそれ以外の世界(ワールド)」という発想があると認めたということだろうか。ちなみに『ガーディアン』は2019年から

                                        グラミー賞がワールド・ミュージックというカテゴリーを止めました | ele-king
                                      • ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生 | ele-king

                                        すべてはナムコからはじまった 『パックマン』『ギャラクシアン』『ニューラリーX』『ゼビウス』『マッピー』 いまや世界中で親しまれているゲーム音楽、その出生の秘密を探る 「今となっては信じられないことだが、初期の時代のビデオゲームにはゲーム音楽が存在しなかった。〔……〕では、いったいどのようにしてゲーム音楽が誕生し、やがて世界に類を見ない、日本独自のゲーム音楽市場が形成されるに至ったのか? 今までほとんど顧みられることがなかった、ゲーム音楽誕生から今日まで至る過程の歴史を紐解くにあたり、とりわけ絶対に避けて通れないのが、ナムコの黎明期の作品である」(まえがきより) 効果音から音楽へ── 多くの取材・証言から浮かびあがる、先駆者たちの試行錯誤と草創期の真実 四六判並製/256頁 ------------ ★刊行記念トーク&サイン会開催! 『ゲーム音楽家インタヴュー集』 『ナムコはいかにして世界

                                          ナムコはいかにして世界を変えたのか──ゲーム音楽の誕生 | ele-king
                                        • 250(イオゴン) ——ポンチャックの逆襲か! 韓国から意表を突いた衝撃のダンス・ミュージック | ele-king

                                          90年代に電気グルーヴが日本に紹介したと言ってもいいだろう、いわば韓国演歌・ミーツ・テクノのミュータント・ディスコ、その名はポンチャック。このスタイルはしかし時代を重ねるなかで風化し、若者たちからは「オヤジの音楽」と切り捨てられて、いつしか忘却へと向かった。そんな現状のなか、ひとりの電子音楽プロデューサー‏‏/DJ 、250(イオゴン)が立ち上がった。K-POPから韓国ヒップホップまでと幅広く音楽制作に携わっているこの実力者は、韓国大衆文化の金字塔=ポンチャックの火を消すまいと、その現代再解釈に向き合うことにした。そして完成したアルバムが『ポン』である。これがまた、実験と大衆性(ユーモア)が両立した素晴らしい内容になっているのだ。ぜひチェックして欲しい。 こちらは先行公開曲の“Bang Bus (ベンバス)”の衝撃的なMV。主演のペク・ヒョンジンは俳優としても有名で、是枝裕和監督が手がけ

                                            250(イオゴン) ——ポンチャックの逆襲か! 韓国から意表を突いた衝撃のダンス・ミュージック | ele-king
                                          • 日本語ラップ最前線 | ele-king

                                            端的に、いま日本のヒップホップはどうなっているのか? ヴァイナルやカセットテープ、CDといったフィジカルな形態はもちろんのこと、配信での販売や YouTube のような動画共有サイトまで含めると、とてつもない数の音楽たちが日々リリースされつづけている。去る2019年は舐達麻や釈迦坊主、Tohji らの名をいろんな人の口から頻繁に聞かされたけれど、若手だけでなくヴェテランたちもまた精力的に活動を繰り広げている。さまざまなラップがあり、さまざまなビートがある。進化と細分化を重ねる現在の日本のヒップホップの状況について、吉田雅史と二木信のふたりに語りあってもらった。 王道なき時代 トラップやマンブル・ラップのグローバルな普及で、歌詞の意味内容の理解は別として、単純に音楽としてラップ楽曲を楽しむ流れに拍車がかかっている感がありますよね。(吉田) ■いまヒップホップは海外でも日本でも、フィジカルでも

                                              日本語ラップ最前線 | ele-king
                                            • Aphex Twin | ele-king

                                              先日この緊急事態における注意喚起のメッセージをポストし、その後 user18081971 名義でいくつかのトラックを公開し続けていたエイフェックス・ツインが、急遽、本日4月10日の18時にライヴ・ストリーミングをおこなうことになった(ロンドン時間、日本時間では4月10日の26時=4月11日の深夜2時)。配信されるのは昨年の9月に録音された「ウェアハウス・プロジェクト」のフル・セットで、ユーチューブとフェイスブックのページをとおして共有される。映像は彼の相棒としてすっかり定着した感のあるワイアードコアが担当。今週末はお部屋でブレインダンス! 以下は、最近サウンドクラウドにアップロードされた6曲。

                                                Aphex Twin | ele-king
                                              • interview with Squarepusher | ele-king

                                                古くからのファンなら、冒頭の和音とドラムを耳にしただけで涙がこぼれてくることだろう。スクエアプッシャー通算15枚目、5年ぶりとなるニュー・アルバム──といってもそのあいだにプレイヤーとしての側面を強く打ち出したショバリーダー・ワンのアルバム(2017)や、逆にコンポーザーとしての側面に重きを置いた、BBCの子ども向けチャンネル CBeebies による睡眠導入ヴィデオのサウンドトラック(2018)に、オルガン奏者ジェイムズ・マクヴィニーへの楽曲提供(2019)という、対照的な性格の1+2作品があったわけだけれど──『Be Up A Hello』は、ぶりぶりとうなるアシッド、切り刻まれたドラム、ジャングル由来のリズムなど、往年のスクエアプッシャーを彷彿させる諸要素に覆いつくされている。とはいえこれをたんなる懐古趣味として片づけてしまうことはできない。アルバムは序盤こそメロディアスで昂揚的な展

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                                                • R.I.P. Sophie | ele-king

                                                  野田努 スコットランド出身のエレクトロニック・ミュージッシャン/DJのソフィー(Sophie Xeon)が2021年1月30日、事故によって亡くなった。アテネの自宅で満月を見るため手すりに登った際、バルコニーから滑り落ちたという。没年34歳。なんということか。 ソフィーの並外れた才能はひと言で言い表すことができるだろう。オウテカと〈PCミュージック〉の溝を埋めることができるおそらく唯一の存在だったと。トランス・ジェンダーの彼女は10年代におけるクイア・エレクトロニカ(アルカないしはロティックなど)を代表するひとりでもあったが、同時にヴェイパーウェイヴと並走していた、“楽器としてのPC” を使う世代によるエレクトロニック・ポップ・ダンス・ミュージックにおけるもっとも前衛的なアーティストでもあった。 アンダーグラウンドにおける彼女の最初の名声は、グラスゴーのダンス・レーベル〈Numbers〉の

                                                    R.I.P. Sophie | ele-king
                                                  • Derrick May | ele-king

                                                    子供の頃からずっと人種的不正と共に生きてきた。二等市民として扱われたことのある人間ならば、人種差別・偏見は心に永遠に消えない傷を刻むことを知っているだろう。このようなメンタリティを持つ人たちの憎悪と無知は、恐怖と愚かさによるものだ。これからも、この惑星には常に人種差別主義者は存在するだろう。だから、人種差別を撲滅・根絶しなければならない! この社会から差別を時代遅れにしてしまおう。(デリック・メイ) I have lived with racial injustice my entire life since I was a young boy, such as anyone who's ever been treated as a second-class citizen knows Racisim and bigotry leave painful deep permanent sca

                                                      Derrick May | ele-king
                                                    • 音楽、人生、坂本龍一 | ele-king

                                                      MOST READ interview with Sleaford Mods 賢くて笑える、つまり最悪だけど最高 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー (interviews)Columns 創造の生命体 〜 KPTMとBZDとアートのはなし ①アーティストと薬 (columns)R.I.P. Mark Stewart 追悼:マーク・スチュワート (news)Cornelius ──2023年、私たちはあらためてコーネリアスと出会い直す。6年ぶりのニュー・アルバムとともに (news)interview with Kid Koala カナダのベテラン・スクラッチDJ、久びさにターンテーブルが主役のアルバム | キッド・コアラ、インタヴュー (interviews)OZmotic & Fennesz - Senzatempo | オズモティック (review)Gina Birch -

                                                        音楽、人生、坂本龍一 | ele-king
                                                      • R.I.P. Andrew Weatherall | ele-king

                                                        野田努 1997年初夏、日曜日の晩、場所はロンドンはカムデンタウンのライヴハウス。新代田FEVERぐらいのフロアに客は20人いるかいないか。DJはアンドリュー・ウェザオール。彼は映画音楽や古いラウンジ・ミュージック、そしてダウンテンポのトラックをおよそ1時間以上にわたってプレイしながら、その日の目玉であるレッド・スナッパーのライヴのためのサポートに徹していた。 「あれだけの大物でありながら、彼は自分の好きなバンドのためなら、こうした小さな場所でも率先してDJをやるんだよ」、イギリスの音楽業界のひとりがぼくにそう自慢げに語った。ライヴが終わると再びウェザオールは彼の信念のこもったDJを再開した。客がいなくなるまで。 WARPの創業者のひとり、スティーヴ・ベケットはウェザオールのことを「アンダーワールドやケミカル・ブラザース以上にビッグになれたのに、敢えてそれとは逆の方向のマイナーなほうに走っ

                                                          R.I.P. Andrew Weatherall | ele-king
                                                        • Brian Eno | ele-king

                                                          昨日、ブライアン・イーノが唐突に新曲を発表している。いや、じつはぜんぜん唐突ではない。タイトルは“Everything's On The Up With The Tories”で、「トーリーなら万事順調」という意味。「トーリー」とは保守党のことで、明日12日にイギリスでおこなわれる総選挙が明確に意識された曲だ。現時点ではジョンソン率いる保守党がリードしており、同党が第一党になるのはほぼ確実なようなのだけれど、過半数を獲得する(=期限内にEUを離脱する)かどうかはわからない情況のよう。ブレグジットだけではなく、医療や気候変動も大きな争点になっている。 同曲は軽快なポップ・ソングに仕上がっており(オアシスばりの韻の踏み方にもびっくり)、イーノ本人も歌っている。やや意訳気味にいくつか歌詞を抜き出すと、「金持ちと貧乏人の格差もばっちり」「NHS(イギリスの医療サーヴィス)をカウボーイに売り払ってく

                                                            Brian Eno | ele-king
                                                          • 追悼:キース・レヴィン | ele-king

                                                            三田格 P.i.L.の初来日にキース・レヴィンはいなかった。正規リリースされたライヴ盤『Paris Au Printemps(P.I.L.パリ・ライヴ)』やブートレグでは『Extra Issue, 26 December 1978』と『Profile』を重点的に聴いていた僕の耳に、あのシャープでクリアーなギターは響いてこなかった。来日直前にキース・レヴィンが脱退したことで、あからさまにジョン・ライドン・バンドでしかなくなったP.i.L.はこともあろうにレッド・ツェッペリンを思わせる演奏に変わり始め、ジョン・ライドンの歌い方が必要以上に演劇的に感じられたことをよく覚えている。いまから思えば元曲と演奏の雰囲気が合っていなかったからなのだろう。アンコールで“アナーキー・イン・ザ・UK”をやったのもサーヴィス精神とはまた別にジャー・ウォブルもキース・レヴィンもいなかったから反対するメンバーがいなか

                                                              追悼:キース・レヴィン | ele-king
                                                            • KAPSOUL | ele-king

                                                              LAを拠点に活動する日本人DJ/ビートメイカー、KAPSOULのファースト・アルバム『ASCENT』がリリースされる。すでに20年以上のキャリアを誇る彼は、これまで日米のさまざまなアーティストにトラックを提供してきており、たとえばそのなかにはデトロイトのハイ・テックのメンバー、キング・マイロが含まれていたりする。2022年、仙人掌をフィーチャーした “GaryPayton” で彼のことを知った方も少なくないだろう。 今回の『ASCENT』にはその仙人掌とB.D.はじめ、LAの人気ラッパーのブルー、ダドリー・パーキンス(Declaime)、ジョージア・アン・マルドロウらが参加。チェックしておきたい1枚です。 LA在住の日本人DJ/ビートメイカー、KAPSOULのファースト・アルバム『ASCENT』、本日リリース! リリースに合わせ、アルバムからドープなインスト曲"90014"のMVが公開とな

                                                                KAPSOUL | ele-king
                                                              • R.I.P.山本アキヲ | ele-king

                                                                すでにニュースになっているように、山本アキヲが亡くなった。3月15日だから3ヶ月ほど前のことではあるが、ご親族の事情があったのだろう、発表されたのは昨日(6月20日)だったようだ。アキヲにとって最後のプロジェクトになったAUTORAのメンバー、高山純がSNSに投稿したことで彼の訃報がいま拡散している。 ぼくが彼の死を知ったのは、数週間前だ。6月の上旬、いま京都で開かれているイーノの展覧会のために、久しぶりに関西に行くのだから、京都のオヒキデの蕎麦屋に顔を出して、それから大阪まで足を延ばして山本アキヲに会おうと、連絡を取るために動いて、その過程において知ってしまった。 アキヲに最後に会ったのはかれこれ10年以上前の話で、宮城健人の案内で、ぼくが大阪は十三にある彼の実家を訪ねたときだった。アキヲの自家製スタジオのなかで、当時好きだった音楽の話しで盛り上がったものだ。変んねぇなーこいつ、と思った

                                                                  R.I.P.山本アキヲ | ele-king
                                                                • interview with Yoh Ohyama | ele-king

                                                                  ゲーム音楽に対する風向きが変わった。あるいは、ゲーム音楽が現在一線で活躍する様々なミュージシャンたちのルーツになっていることが、多くの人びとに理解されはじめた。そのきっかけのひとつを作ったのが、2014年のドキュメンタリ作品「Diggin' In The Carts」だったことは間違いないだろう。同ドキュメンタリのディレクターであるニック・ドワイヤーは2017年、〈Hyperdub〉主宰コード9と共同で「Diggin'~」のレトロゲーム音楽コンピレーションを制作する。このとき ele-king はニックへの取材を通してゲーム音楽研究家 hally こと田中治久の存在を知り、そこから『ゲーム音楽ディスクガイド』の刊行へと歩みを進めるのである。 同書はゲーム音楽を「ゲームプレイの追体験装置」ではなく、ゲームを知らなくても楽しみうる「一個の音楽」として捉え直し、40年に及ぶ歴史のなかから950枚

                                                                    interview with Yoh Ohyama | ele-king
                                                                  • R.I.P. Vivienne Westwood | ele-king

                                                                    MOST READ interview with Sleaford Mods 賢くて笑える、つまり最悪だけど最高 | スリーフォード・モッズ、インタヴュー (interviews)Columns 創造の生命体 〜 KPTMとBZDとアートのはなし ①アーティストと薬 (columns)R.I.P. Mark Stewart 追悼:マーク・スチュワート (news)Cornelius ──2023年、私たちはあらためてコーネリアスと出会い直す。6年ぶりのニュー・アルバムとともに (news)interview with Kid Koala カナダのベテラン・スクラッチDJ、久びさにターンテーブルが主役のアルバム | キッド・コアラ、インタヴュー (interviews)OZmotic & Fennesz - Senzatempo | オズモティック (review)Gina Birch -

                                                                      R.I.P. Vivienne Westwood | ele-king
                                                                    • ♯3:ピッチフォーク買収騒ぎについて | ele-king

                                                                      音楽メディアにおける批評の時代は終わり、いまは「ファンダム」(ファン文化)の時代だそうだ。言葉の使い道は賞賛のためか、さもなければ人気者にぶらさがって、売れているものがどうして売れている(=どうして成功している)のかを分析し解説すること──ではないようだ。要するに、ファンダムこそが音楽の販売促進の有力な機動力で、アーティストにとってもレーベルにとっても必要なのはファンダムであると、そういう話だと。この解釈で合っていたら、なるほどそりゃそうだと思う。が、しかし音楽文化はそれだけでは語れない、より複雑なものなのだ。およそ1世紀前にアイシュタインが解読した宇宙空間のように。 去る1月、コンデナストによる『ピッチフォーク』の『GQ』への吸収が欧米で話題になった。『ニューヨーク・タイムス』から『ガーディアン』といった大手メディアが大きく記事にしているくらいだからこれはひとつの事件といっていいだろうし

                                                                        ♯3:ピッチフォーク買収騒ぎについて | ele-king
                                                                      • R.I.P. Phil Spector | ele-king

                                                                        新型コロナウイルス感染による合併症でフィル・スペクターが亡くなった。命日は2021年1月16日、享年81、女優ラナ・クラークスン殺人容疑で有罪となり、キャーフォーニャ州立刑務所の薬物中毒治療施設に収監されていた(*1)。 合掌。……お直り下さい。 前世紀末1980年代半ばのある晩、行きつけの呑み屋でザ・ルーベッツの “シュガー・ベイビー・ラヴ” が有線放送から流れた。それを聞きながら「フィル・スペクターの流儀は時代を超えて続いているのだな」と、わたしはひとり納得していた。ところが同曲は1973年のイギリス人たちによる録音作品であり、彼の遺産は20年以上の歳月だけでなく、大西洋も超えていたのだ。 永遠の循環進行で「シュバッシュバリバリ」とスキャットを繰り返す男声ハーモニー多重層、前面には「アハー」と高音域のファルセトーが出て来る。他愛のない、しかし永遠に揺るがない愛の真実が唄われ、後半には低

                                                                          R.I.P. Phil Spector | ele-king
                                                                        • ♯1:レイヴ・カルチャーの思い出 | ele-king

                                                                          2023年、少し嬉しいかもと思ったのが、日本におけるレイヴ・カルチャー再燃(しているらしい話)だった。え、まさか、ほんと? 人間歳を取ると無邪気さが減少しシニカルになり、老害化することは自分を見ていてもわかる。文化とは、上書きされ、アップデートしていくものだし、ぼくはこんにちの現場を知らないから、そもそも「再燃」について何か言える立場ではない。しかしぼくにも言えることがある。いまから30年以上前の、オリジナルなレイヴ・カルチャーの話だ。当時のリアル体験者のひとりとして、その場にいた当事者のひとりとして、それがどんなものだったのかを(ある程度のところまで)記しておくことも無益ではないだろう。 かつて、それがレイヴかどうかを判断するのは簡単だった。足がガクガクになるほど踊ったあとの朝の帰り道に、あるいは数日後に、「ところで誰がDJだったの?」、これがレイヴだった。たとえば、クラブでもフジロック

                                                                            ♯1:レイヴ・カルチャーの思い出 | ele-king
                                                                          • R.I.P. Mark Stewart | ele-king

                                                                            文:野田努 「彼らはついに、変化とは、改革を意味するものでも改善を意味するものでもないことに気がつくだろう」——フランツ・ファノンのこの予言通り、世界は変わらなくていいものが変えられ、変わって欲しいものは変わらない。憂鬱な曇り空に相応しい訃報がまた届いた。その少し前にはジャー・シャカの訃報があり、今朝はマーク・スチュワートだ。いったい、坂本龍一といい、シャカといいマークといい、あるいは昨年から続いている死者のリストを思い出すと、勇敢な戦士たちがあちら側の世界に招かれている理由がこの宇宙のどこかに存在しているのではないかという妄想にとらわれてしまう。ファノンはまた、「重要なのは世界を知ることではない、世界を変えることだ」と言ったが、その意味を音楽に込めた人がまたひとりいなくなるのは、胸に穴が空いたような気分にさせるものだ。 一般的に言えばマーク・スチュワートは、ブリストル・サウンドのゴッドフ

                                                                              R.I.P. Mark Stewart | ele-king
                                                                            • 編集部より | ele-king

                                                                              周知のように、いまアメリカ全土では、ミネアポリスでジョージ・フロイドが白人の警察官から暴行を受け死亡した事件をきっかけに、人種差別に反対する抗議運動が広がっている。このプロテストを支持する意味で、音楽業界全体が活動休止する「black out Tuseday」が本日起きている。 まず、エレキング編集部に入って来ている情報を整理しながら、どう考えているかを明らかにしておきたい。コロナ騒ぎが起きる前から、たとえばロサンジェルス在住のニール・オリヴィエラ(デトロイト・エスカレーター・カンパニー名義で知られる)から、すでに冷酷な格差社会が広がっており、いつ暴動が起きてもおかしくないテンションがあるという話は2か月前に聞いていた。また、これはアメリカの他の都市にも言えることだが、黒人が多く住んでいる地区にはスーパーも数少ない上にマクドナルドの方が安上がりなので、どうしても食生活に偏りが出てしまう。結

                                                                                編集部より | ele-king
                                                                              • interview with Joy Orbison | ele-king

                                                                                ジョイ・オービソンは素晴らしい。なにしろ彼の叔父は80年代末という、まだこのジャンルが超アンダーグラウンドで、海のモノか山のモノかもわからなかった時期から活動しているジャングルのDJ、レイ・キースなのだ。30年ほど昔の話になるが、ぼくは彼の叔父が関わっていたロンドンの現場を経験している。それはいまだ忘れがたきハードコアで、ラフで、労働者階級的で、人種と汗の混ざったパーティだった。メインフロアがラガ・ジャングル、セカンドフロアがハウスという構成で、DJブースの脇には盛り上げ役としてMCとダンサーが立ち並んでいたが、そんな必要などないくらいにオーディエンスの熱狂が並外れていた。あんな汗まみれの現場で長年回してきたDJが身内にいる。しかも13歳にしてターンテーブルでミックスを覚えたら、それはもうUKダンス・カルチャーの申し子と言える才能が磨かれよう。 じっさい2009年の彼のデビュー・シングル「

                                                                                  interview with Joy Orbison | ele-king
                                                                                • スティーヴ・アルビニが密かに私の世界を変えた理由 | ele-king

                                                                                  自分でも気付かぬうちに、スティーヴ・アルビニは私の人生を変えていた。彼の特定の作品との出会いによって啓示を受け、人生の中にそれ以前と以後という明確な境界線が引かれたということでは全くない。それよりも彼の影響は、私の育った音楽世界の土壌に染み込んでそれを肥沃にしたものであり、そうとは知らない私が無意識に歩き回った風景そのものだったのだ。ようやく獲得し得た視野と意識によって振り返ってみると、私が通ってきた世界のすべてに彼の手が及んでいたことを思い知らされる。 世代的なことも関係している。1962年生まれのアルビニは、ちょうど1980年代にジェネレーションXが成人し始めた頃の音楽シーンで地位を確立し、彼の音楽とアティチュードはその世代の心に響く多くの特徴を体現していたのだ。 彼の作品は挑戦的で、パンクが退屈さに怒りをぶつける方法をさらに推し進めたものだった。彼自身の初期のビッグ・ブラックやそれ以

                                                                                    スティーヴ・アルビニが密かに私の世界を変えた理由 | ele-king