なんでいまさら水の構造研究なのか? 水はとても身近な存在で、H2Oというそのシンプルな分子構造は中高生にもよく知られています。そんな水の様態に未解明の謎があるなどとは、ほとんどの人が想像さえしていないことでしょう。でもそれは紛れもない事実なのです。科学研究とは未知の新奇な事象を対象とするものだと考えられがちなのですが、水や氷のようなごくありふれた事物の奥に潜む謎を見出し、その解明を試みることも実は科学研究の重要な仕事なのです。SPring-8のような世界最先端の光科学研究施設で水の構造研究が進められているというと、とても意外な印象を抱かれるかもしれません。でも、それには相応の深い背景があるのです。皆さんは、「とても大きな氷の冷熱(ものを冷やす力)がどこに蓄えられているのか?」とか、「水の密度が4°Cで最大になり、それより温度が高くても低くても密度が小さくなるのはなぜなのか?」とか、「固体の