(日本心理学会第78回大会シンポジウム「人間関係の問題を人生の課題としてアドラー心理学から考える」での発表原稿) ソクラテスが青年に害悪を与えたというかどで訴えられたのは70歳の時でした。結果、彼は死刑になるのですが、法廷での演説の冒頭、この年で初めて裁判所にやってきたので普段と同じ話し方をしても驚かないでほしい、言葉使いのことはあっさりと見過ごしてほしい、ただ私がいっていることが正しいかどうかということにだけに注意を向けてほしいといっています。私は普段は『嫌われる勇気』に登場する哲人と同じく古都のはずれでひっそりと暮らしていますから、これほど多くの人の前に出るとどぎまぎしてしまいます。私もソクラテスと同じことをお願いしなければなりません。 アドラーは、 「自分に価値があると思う時にだけ、勇気を持てる」 といっています。ここでいう「勇気」とは「対人関係の中に入っていく勇気」という意味です。