不安だらけの日本社会。今こそ、迷惑をかけあうことが未来を拓(ひら)く――。ゴリラの研究をしてきた霊長類学者の山極寿一さん(70)は、低成長時代にめざすべき社会について、こう指摘します。その真意とは――。 人と付き合うことを忘れた社会 ――今の日本社会は不安が広がり、希望を感じている人が少ないように感じます。なぜですか? 一言でいえば、「時間の使い方」にその答えがあると思います。 産業革命までは、人類は自然の恵みに頼り「自分の時間」ではない自然な時間を生きていました。 それが産業革命以後、都市がつくられ、工業生産が始まり、時間を管理するようになった。人工的な時間をつくってしまった。生産を高めるために、なるべく時間を効率的に使うという思想が生まれました。 時間を管理することで、人間は「工業的な時間」に駆り立てられるようになった。私はそこが今、行き詰まりに達しているのだと思いますね。 政府や自治