宿泊客から従業員、住民、復旧作業員が肩を寄せ合うようにして暮らしてきた。そして、いつしか強い連帯感が生まれていった。 町を復興しなければ、人々がこの地を去ってしまう。そうなったら、ホテルも会社も商店も、すべてが意味をなさなくなる。 その時、ホテルに集う人々は知った。自分だけで生きてきたわけではないことを。 そしてホテルは、町の復興に携わる人々が集散する「復興の拠点」になりつつある。 南三陸ホテル観洋――。 太平洋を望むそのホテルの数カ月の物語を始めよう。 内藤 地震が起きた時のことを振り返ると、何が記憶に強く残っていますか? 「その時、ロビーから津波が見えました」 阿部憲子女将 3月11日の午後、お客様とこのロビーで打ち合わせをしていました。ちょうど、20数人のお客様がソファーに座って、チエックインを待っていました。 そして、午後2時46分に揺れ始めました。 最初は、それほど大きな地震だと