堀場と中山の熱意と努力は、2013年に入り新たな展開を迎える。2月、インラック首相(当時)が公式対話を開始することを発表したのだ。これを受け、マレーシアの首都クアラルンプールで3月以降、計3回にわたり、政府と、武装組織のひとつであるBRNが交渉のテーブルに着いた。歴史的な出来事だといっていい。 協議されたのは、①BRNは分離・独立ではなく、パタニ民族の解放を目指す組織であると認める②マレーシアを調停者とする③タイ治安部隊を撤退させ、パタニのマレー系住民の統治権を認める④和平対話を東南アジア諸国連合(ASEAN)、イスラム協力機構(OIC)、NGOなどの立会いの下で行う⑤治安事件で拘留されているすべての容疑者を釈放する―ことである。だが、交渉は進展せず、具体的な成果は得られなかった。 それ以上に、タイは、インラック氏の兄で、汚職防止法違反の罪に問われ亡命中のタクシン元首相を支持する勢力と、反