昔、私がまだ生意気な記者だった頃、先輩記者に説教されたことがある。自分の取材力に自信を持ち始め、いい気になっていた時期だったこともあり「何を言ってんの、この人」と斜に構えて聞いていたので、説教の中身はよく覚えていない。ただ、一つだけ強く記憶に残った話がある。それは次のような質問だ。「お前、記者と編集者との違いを知っているか」 私が「知りませんよ」とそっけなく答えると、先輩記者はこう諭した。「編集者は若い作家らの面倒を見て一人前に育てあげる。だから大成した作家は、その編集者が転職したり独立したりした時、昔の恩返しに小説やエッセーを寄稿してくれる。反対に『俺が、俺が』の記者なんか皆に嫌われるから、将来落ちぶれたら誰も助けてくれないぞ」 残念ながら、そんな含蓄のある説教を聞いたにもかかわらず、私はそれ以降も「俺が、俺が」の記者で押し通した。だが「デスク」の仕事をするようになって、その先輩記者の説
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