ブックマーク / toikimi.hateblo.jp (5)

  • 釣り針(創作掌編) - かきがら掌編帖

    僕が大切にしている「家宝」は、振り子と手書きの体験記の2つで、曾祖父母が生きた証しの品だった。 曾祖父はダウジングを生業としていた。 ダウジングとは、Y字型やL字型の棒、あるいは振り子を使って、地下の水脈などを探し当てるという、占いのような技術だが、曾祖父は達人の域に達していた。 依頼を受けて全国各地へ出向き、井戸や温泉、鉱脈はもちろん、地下遺跡に遺骨、ご先祖の埋蔵金まで発見したらしい。 ダウジング用の振り子のおもりは、形、素材とも様々だが、曾祖父のは少し変わっていて、釣り針の形をしていた。 曾祖父母は、当時としては珍しい恋愛結婚だった。仕事がら長旅に出ることが多く、共に暮らす時間は短かったけれど、家に帰ったときには、旅先で起こったことの一部始終を面白おかしく語って聞かせたようだ。 曾祖母はその話を書き留め、清書したものを綴り、『釣り針記』という題をつけて、父親との思い出が少なかった息子に

    釣り針(創作掌編) - かきがら掌編帖
    rakkoara
    rakkoara 2019/06/12
    初々しくて、ほのぼの、ドキドキしちゃいました^_^♡
  • 蔵(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖⑦~ - かきがら掌編帖

    晶太がいつものように、銀ひげ師匠の書道教室へ行くと、ちょうどお客さんが帰るところだった。 このあいだスケアクロウのことで相談にのった、ゆなちゃんのお祖母さんが、若い女の人を連れている。ゆなちゃんと仲良しのつぐみちゃんのお母さんで、容子さんという人だった。 「いや、なんだかすっかり信用されたみたいでね。知り合いが心配事を抱えているから、話を聞いてあげてほしいと頼まれたんだよ」 お客さんを見送って戻ってきた師匠は、嬉しそうに、手土産でもらったお菓子を分けてくれる。 お菓子はおいしかったけれど、容子さんの相談事というのは、ずいぶん怖い話だった。 家の蔵から、夜な夜な、声が聞こえるというのだ。 低くこもった声が、繰り返し『ここから、出してくれ……』と、訴えてくるらしい。 その蔵があるのは久松さんという家で、容子さんの大叔父にあたるおじいさんが、長いあいだ独りで暮らしていた。 バイオリンが趣味という

    蔵(創作掌編)~銀ひげ師匠の魔法帖⑦~ - かきがら掌編帖
    rakkoara
    rakkoara 2019/01/27
    つぐみちゃんがバイオリンを続けられてよかった(^_^)♡おじいちゃんも安心しましたねp(^_^)q
  • ゲシュタルト療法~変化の逆説~ - かきがら掌編帖

    ゲシュタルト療法のワークで時折、「変化の逆説」という言葉を耳にしました。 簡単に述べると、「人は、自分でない者になろうとする時ではなく、ありのままの自分になる時に変容が起こる」ということである。つまり、変容は自分あるいは他者がその人を変えようとする強制的な試みによって起こるのではなく、ありままの自分でいることに時間と努力を費やす時──自分自身の現在のありように完全にひたる時──に変容は起きるのである。 (『変容の逆説的な理論 Paradoxical Theory of Change 1970』医学博士アーノルド・R・ベイサー) 「あるべき自分」や「なりたい自分」を目指したとき、もしそれが、自己否定から始まっているのであれば、成功するとは考えにくい。今の自分を否定して、新たな人間になろうとするのではなく、今の自分を当に受け入れたときにこそ、変化は自然に起き、「意義のある整然とした変容が可能

    ゲシュタルト療法~変化の逆説~ - かきがら掌編帖
    rakkoara
    rakkoara 2019/01/19
    本当に360度変わってたとしても、自分がそれを肯定的に受け止められたらいいですねp(^_^)q
  • 「あなたは敗れたのです」(創作掌編) - かきがら掌編帖

    サトシは中学時代からの友だちだが、正月も仕事で帰って来ないというので、こちらから会いに行くことにした。 シングルパックの切りをいくつかと、家にあった金箔入り吟醸酒をリュックに詰め、さほど遠くはないものの、一度も訪れたことがない町へ向かう。 駅の改札を出ると、サトシが待っていて、相変わらずのポーカーフェイスを少しだけくずして笑った。長い付き合いなので、すごく歓迎してくれていることがわかる。 私は文系の社会人だから、型通り新年の挨拶をしてから、 「ちょっとやせたんじゃない? ちゃんとべてる?」 と、友の身を気遣った。 聞けば、初詣もまだしていないと言う。サトシが淡々と提案した。 「同僚に聞いたけれど、変わったおみくじが評判になっている神社があるみたいだ。行ってみるかい」 サトシの職場は、理系の頭脳集団で成り立っているらしいが、それなりに世間話もしているようだ。 「いいね。どんな風に変わって

    「あなたは敗れたのです」(創作掌編) - かきがら掌編帖
    rakkoara
    rakkoara 2019/01/19
    時間差で新たな視点を提示してくれるおみくじ、良いですねp(^_^)q
  • 奇跡の一日(創作掌編) - かきがら掌編帖

    僕は昼前に会社を早退した。毎年恒例のことなので、誰も気にしないし、何も言われない。 午前中に予約しておいた花屋で花束を受け取り、駅へ向かった。 霊園までは、電車を乗り継いで1時間半かかる。緑が豊かで広々とした、公園のような場所だ。 明るい陽光の下、長いあいだその場に佇み、君のことを思っていた。 初めて会ったときの、ひらめくような不思議な感覚。互いの気持ちを確かめるのに、しばらく時間がかかったけれど、そのあとはまるでローラーコースターに乗っているみたいだった。 結婚して2人で暮らし始めるまでには、煩雑な課題が山積みで、幸せに酔っていなければ、うまく乗り切れなかったかもしれない。 小さなケンカと譲り合いを繰り返し、2人だけの型を作りあげていくうち、しだいに僕たちは「家族」になっていった。 僕は安心しきっていたのだと思う。 朝から仕事に追われていたあの日、遅くまで残業したあと、同僚たちと居酒屋に

    奇跡の一日(創作掌編) - かきがら掌編帖
    rakkoara
    rakkoara 2019/01/12
    素敵な旦那様(^。^)♡
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