僕が大切にしている「家宝」は、振り子と手書きの体験記の2つで、曾祖父母が生きた証しの品だった。 曾祖父はダウジングを生業としていた。 ダウジングとは、Y字型やL字型の棒、あるいは振り子を使って、地下の水脈などを探し当てるという、占いのような技術だが、曾祖父は達人の域に達していた。 依頼を受けて全国各地へ出向き、井戸や温泉、鉱脈はもちろん、地下遺跡に遺骨、ご先祖の埋蔵金まで発見したらしい。 ダウジング用の振り子のおもりは、形、素材とも様々だが、曾祖父のは少し変わっていて、釣り針の形をしていた。 曾祖父母は、当時としては珍しい恋愛結婚だった。仕事がら長旅に出ることが多く、共に暮らす時間は短かったけれど、家に帰ったときには、旅先で起こったことの一部始終を面白おかしく語って聞かせたようだ。 曾祖母はその話を書き留め、清書したものを綴り、『釣り針記』という題をつけて、父親との思い出が少なかった息子に