コロナ後の世界と「ブルシット・エコノミー」(片岡大右訳) デヴィッド・グレーバー 訳者まえがき 以下に読まれるのは、デヴィッド・グレーバーがフランスの日刊紙『リベラシオン』の2020年5月28日紙面に寄せた論考(「David Graeber : vers une « bullshit economy »」)を、著者自身が公開した英語原文に基づき翻訳したものである。読みやすさを考慮して、段落分けは仏語版を参照しつつさらに増やし、見出しは独自に補った。 人類学者はこれまでも、コロナ禍のただなかでの状況的発言を散発的に行ってきた(「魔神は瓶に戻せない」)。談話ではなく書き下ろしの原稿としては初めてのものとなる本稿は、それらと同じくおおむね『ブルシット・ジョブ』(原著2018年、日本語訳は岩波書店より2020年7月刊行予定)での論争的な問題提起の延長線上にあるけれども、「経済」というコンセプトの歴