私が注目しているのは、アメリカの失業率よりも失業者の絶対数である。アメリカの経済回復をGDPやニューヨーク証券市場の株価で見るのは必ずしも正しくない、と思う。アメリカ経済が、一種詐欺的な金融経済で底上げされて数字が回復したように見えても、結局は「中間階層」が回復しない限り、本当とはいえない。中間階層こそ、住宅や自動車を購入し、税金やソーシアル・セキュリティタックスを納入するアメリカ経済の大黒柱だからだ。「中間階層」の回復とは、別な言い方をすれば安定した収入を持ち、慎ましやかだが、落ち着いた生活ができる階層、いわば普通の庶民階層の回復である。このためにはまず安定した雇用の確保であろう。アメリカの労働人口全体を1億5000万人と大ざっぱに見積もれば、その1割が失業者である限り、表面数字がいかに改善したかに見えても、アメリカ経済の回復はありえない。 「アメリカの失業者」はILOの定義から見ると、