「マガジン航」のエディターズ・ノートは毎月1日に公開することにしているのだが、今月はどうしても考えがまとまらないまま最初の週末を越えてしまった。理由はほかでもない、出版物流の限界がはっきりと露呈してきたからであり、それを前提とした出版産業の未来をポジティブに考えることが難しいと思えたからである。 取次自身が認めたシステム崩壊 出版関係者の多くが読んでいると思われる二つのネット連載が、この問題に触れている。まず小田光雄氏の「出版状況クロニクル」は6月1日の記事(第121回)で「新文化」(4月26日付)や「文化通信」(5月21日付)などが伝えた大手取次のトーハン、日販の経営者の生々しい発言を紹介している。 「出版業界は未曽有の事態が起こりつつある」(トーハン・藤井武彦社長) 「取次業は崩壊の危機にある」(日販・平林彰社長) こうした大仰な発言の背景にあるのは、取次という出版流通ビジネスの屋台骨
はじめまして。コグチスミカです。普段は別名義で、小説家、ライターとしてほそぼそと活動しています。現在、1歳児の子育てに奔走中の主婦です。 今回、どうしてもこの件について書かずにはおれず、だれかに知ってほしくて筆を取りました。 この記事を読んだ友人知人は、私がだれだか気づくかも知れませんが、どうか言及しないでいただきたいのです。あなたたちに正体がバレることはなんの問題もなく、むしろ喜ばしくすらあるのですが、クライアントにバレたら失職するかもしれないのです! キュレーションサイト「炎上」を生き延びたライターとして 2016年11月末、DeNAの運営する医療情報サイト「WELQ(ウェルク)」が、炎上し、公開停止しました。例えば「胃痛 原因」などのキーワードで検索すると、Google検索で必ず上位に表示されていた大手のサイトでした。ですが、その記事の内容は、私たちのような単価の低いライターによって
3月5日、EU司法裁判所はフランスとルクセンブルクが電子書籍に適用していたVATの軽減税率をEU法違反と判決した(判決文[PDF]。下はこの判決を報じたニュース映像)。この2国は、電子書籍を紙の本と同じ扱いとして、2012年からフランスは5.5%、ルクセンブルクは3%と軽い税率で販売することを許可していた。 他のEU加盟国は電子書籍を「電子的なサービス品目」として扱い、20%前後の税率を適用していたため、統一市場として不平等な競争の様相を呈していた。 EUの今回の判断は、「電子書籍は紙の本とは違う」「加盟国はEUの税制を遵守し足並みを揃えなければならない」というメッセージを明確に発した。 © European Union, 2015 EUの付加価値税体系はどうなっているか この記事を書いている私はベルギーの首都、そして欧州の首都とも称されるブリュッセル在住である。ベルギーでは基本税率は21
アマゾンCEOのジェフ・ベゾスがワシントン・ポスト紙を買収、というニュースに椅子から転げ落ちた。ポストの記者もI was floored.とツイッターでつぶやいていたので、誰にとっても青天の霹靂といったところだろう。 私は一瞬「アマゾンが?」と思ったのだが、これは間違いで、一説には250億ドルとも言われるベゾスの個人資産の中からワシントン・ポスト紙とその関連企業を2億5000万ドルで買い取ったという話。ってことは彼にとってはこの大金もお財布の1%というハシタ金。1万円持ってたから100円使ったった、みたいな。 とりあえずこのニュースのバックグランドを説明しよう。どういう影響がありそうかも。 首都ワシントンのリベラル系老舗紙 ワシントン・ポストは言わずと知れた創業135年という老舗。ニューヨーク・タイムズ、ロサンゼルス・タイムズと並び全米で影響力の大きい新聞で、本社が首都ワシントンというのも
Some rights reserved by mikecogh 先週、アマゾンのニュースで「iPhoneで本のバーコードを写メするとその場でアマゾンからオーダーできるアプリをまもなく発表」というのを見て、こりゃまたなんて恐ろしいことが! これでまたインディペンデント系の書店がつぶれるな、というツイートをしたら、日本の人たちからの反応が「で、それが何か?」系だったので、これがどれだけ恐ろしいのか、説明してみる。 ようするに、本屋に足を運び、現物を手に取りながらそこで本を買わずにアマゾンでオーダーしちゃうというのだ。これが図書館や、友だちの家にいて「この本、自分でも買いたいな」というシチュエーションなら問題ないかも知れない。だけど、本屋に来てまでそれをやってしまうのだよ。しかもアメリカの本屋、ハタキを持った親爺もいなければ、客の目が届かない死角が多いんだよ。 たしかにアマゾンは今までにも「フ
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