その中心的なアイデアに関して言えばこの本の着想を得たのは一九三七年のことだったが、書き始めたのは一九四三年の終りだった。書き始めた時でもこの本を出版するのが非常に難しいだろうことは明らかだったが(本と名のつくものであれば間違いなく何であっても「売れる」という現在の本不足の状況にもかかわらず)結局、四つの出版社に出版を断られた。その中で思想的な理由で断ったのは一社だけだ。二社はずっと以前から反ロシア的な書籍を出版していたし、もう一社はこれといった政治色の見られない出版社だった。出版社のひとつは最初この本を受け入れたが、出版の準備が終わった後になって情報省情報省:第一次世界大戦末期、第二次世界大戦中に設立された情報機関。一九四六年に中央情報局へ改組された。におうかがいをたてることに決めた。情報省はこの本の出版に対して警告を発したか、少なくとも強く熟慮を求めたらしい。出版社からの手紙の一部を引用