今年のノーベル賞に決まった3人は、医薬品やプラスチックなど様々な炭素でできた異なる化合物を、自在につなぐことを可能にした。この3人を結ぶのが、金属のパラジウムを触媒に使ったクロスカップリング反応だ。違う触媒も含めると、カップリング反応は日本人が多くかかわっており、いわば日本のお家芸ともいえる。 3人が使ったパラジウムは、自分の体積の900倍以上の水素を吸収して蓄える性質がある。1950年代ごろから触媒として使われるようになった。 まず60年代に、パラジウムを有機物の骨格となる炭素同士を結びつけるのに使ったのは、東京工業大の辻二郎名誉教授らで、「辻・トロスト反応」として知られる。さらに、リチャード・ヘック・米デラウェア大名誉教授らが、「ヘック反応」と呼ばれる新たな反応を確立させた。 一方、クロスカップリングは、72年に望み通りに炭素同士を結合させる反応として、玉尾皓平・理研基幹研究所所