以前から疑問に思い続けていることがある。世の学者や識者が企業の成功例でなぜ成功したかを語る時、成功に到ったもっともらしい理屈や理論付けをして、その手法を実践することを勧めるのが常であるが、それは後付けではないか。後付けの理屈をもって方法論をわが物顔に語るのは、ズルイのではないか。 大体、例えば新製品開発などについて理詰めの何とか手法を使って発売まで持ち込んでも、予測どおり成功したためしはない。それもそのはず、新製品にしても新規事業にしても、事前に緻密なマーケティングや企画を試みたとして、時の政治、経済、社会事情、競合相手などなど予想外の影響を受けて、結果が変化する可能性が大だからである。 以前、高名な経済学者N氏の講演で、言い訳がましい滑稽な発言を聞いて、思わず密かに苦笑したことがある。「以前の講演で、参加者から“先生がそれほど将来事業としてあるべき姿を説くなら、具体的にどんな事業に取り組