あぜ道(畦畔)は、その上を歩いたり、所有権を明確にするためだけにあるのではありません。日本のような温暖多雨の環境では、雑草の生育が旺盛です。その中で農作物を生産する農業生態系を維持するために、外部から農地に雑草や病害虫が侵入するのを防ぐ防波堤の役目を果たしており、自然生態系との境界をなす砦(とりで)であるといえます。 ヒガンバナは、このようなあぜ道に、ご先祖がある「意図」を持って植えられた重要な植物なのですが、今ではその意味が忘れ去られています。 わが国のヒガンバナは3倍体で、花は咲いても種子ができません。今日各地に見られるのは、人間が広めたものです。古い時代に中国大陸から持ち込まれたものと考えられています。 ヒガンバナの全草、とくに球根(鱗茎)にはリコリンという猛毒アルカロイドが含まれています。このために、水田畦畔でネズミやモグラが穴を開けるのを防ぐために栽培されていたと思われます。これ
![ヒガンバナ:ご先祖の知恵 (常陽新聞連載「ふしぎを追って」) (情報:農業と環境 No.114 2009年10月)](https://cdn-ak-scissors.b.st-hatena.com/image/square/5ab40cc97b0bf81ae21569a884cca522428321fe/height=288;version=1;width=512/http%3A%2F%2Fwww.naro.affrc.go.jp%2Farchive%2Fniaes%2Fmagazine%2F114%2Fmgzn11411.jpg)