「視界全体に霞みがかかったようで、数メートル先は何も見えません。なんだか変な臭いもするんです。まだ朝なのに、もう夕方みたいな感じで……。こんな中で生活していたら、誰だって体調不良になりますよ」 北京に住む友人、毛燕燕(28歳)さんはPM2.5に汚染された空を見上げながら、ため息交じりにこうつぶやく。北京の名門大学を卒業後、IT企業に勤務しているキャリア女性だ。 移動はできるだけタクシーを使うようにし、なるべく外は歩かないようにしているが、それでも限界があるため、大学時代の友人が多く住むニューヨークに引っ越すことを真剣に検討している。北京の空気があまりにも悪過ぎるからで、とくに12月に入ってからは「もう我慢できない」と、中国版LINEの微信上で嘆いている。 一人娘なので、両親は彼女のアメリカ行きを反対しているというが、それでも「将来、子どもが産めない身体になったらどうするのよ」と彼女が