事件現場となった三重県名張市葛尾地区の住民たちは、奥西勝死刑囚を「犯人」として心の平静を保ってきた。奥西死刑囚の再審の可能性が生まれ、「それでは誰が犯人なのか」「もうそっとしておいてほしい」と困惑の声が広がった。 半世紀前の事件当時に十八戸あった集落は現在、十四戸に減った。事件現場の公民館は一九八七(昭和六十二)年に取り壊されゲートボール場になっている。 奈良県山添村側から懇親会に参加し、ぶどう酒を飲んだが助かった浜田能子さん(78)は「亡くなった人や今も苦しんでいる人を思うと複雑です」と伏し目がちに語った。「再審になっても完全に気持ちが晴れることはないと思う」という。