うまくいかないというよりは、必ずしも賞賛されない理由といったところか。 まず、映像化するのはすばらしいことだという誤解がある。 小説という文字だけで表現された物語を映画のような大迫力の映像メディアにすると、なんだか「進化した」ような気がする。 これが実は違う。映像化は、どちらかといえば退化だ。 なぜ退化かと言えば、人間の想像力を阻害する度合いが大きくなってしまうから。 視覚による情報というのは、たとえどんなにそれが洗練されていったとしても、想像力によって表現される無限の表現と比べたらカスのようなものだ。 もちろん、文字から想起されるものというのも制限は多い。火と書けばそれだけで想像できる範囲は狭まってしまう。 しかし、実際に火の映像を見せられるのと火という文字から火を想像するのは大きな違いがある。 それは、火の映像は映像を作った人間の「火」を映像化したものであり、しかも不完全(完全には想像