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ブックマーク / harutomo99.seesaa.net (12)

  • あまりにもアニマルなアメリカ商業銀行

    ラスカルさんが「「もっと需要を、そしてもっとレバレッジを」と訴えられています。 「昨年9月末の金融危機と、それによって深刻化する今回の不況という一連の経済事象について、経済書の世界でも事実関係の整理がなされつつあります。」ということなのですが、統計のほうも徐々に発表されてきています。なんといっても金融を総合的に捉えているのは、資金循環表です。「「アメリカの国債消化は問題ない(はず)」の第一回検証」で紹介したようにアメリカの2008年末のものが発表されています。日のものも日銀行から発表されました。 「今回の金融危機を招いた原因として、「アニマル・スピリット」を背景とした投資銀行のレバレッジ経営が指摘されます。」のは確かですが、この循環表を見ると、来、投資銀行に比べれば堅実であるべきアメリカの商業銀行も、ずいぶん「アニマル・スピリット」を持ち、「レバレッジ経営」をやっていたことが分かりま

  • 2007年度のSNA

    2008年1-3月期のGDP速報が発表され、前期比の年率換算で3.3%の成長であったことが、マスコミで大きく取り上げられています。これを見る限りかなりの生産の増加ということになります。 それはいいとして、最近の資源の高騰の悪影響を考慮した場合に、所得はどうなっているのでしょうか?「輸入原材料価格の高騰にどう対応すべきか?」で書いたように、このような現象が起こっていると、「生産量が変化していないにもかかわらず、高騰した輸入財を入手するために、生産した財をこれまでより大量に外国に輸出しなければならなくなり、その結果、国内で使える財の量(所得)が減る。」という残念な結果がもたらされるからです。 内閣府の発表によれば、国民総所得(GNI)の成長率は0.5%です。ほとんど横ばいといっていいでしょう。 四半期の数字はぶれやすく、さらに年率換算すると不安定になります。そこで、最も安定している、年度の数字

  • 市場の失敗 その2 量子力学

    「市場の失敗 その1」その1で述べたように現実の労働市場は、はなはだ不完全な物でしかありません。 これに加えて労働サービスの提供者である労働者は意志を持っており、労働サービスは買い手である企業の自由にはなりません。多かれ少なかれ労働者の意志が労働サービスの質と量に影響を与えます。これは普通の財とは全く違います。 財を売った後、その売り手の意志が財に影響を与えることはありません。例えば、スープ皿を1枚買えば、買った人間はこのスープ皿を完全に自由に取り扱うことができます。テーブルに並べようとしたら、スープ皿の機嫌が悪くてうまく並ばないということはあり得ません。そのかわり買った人が何もしないのに、自分から器洗い機に入ることもありません。また、スープ皿に支払った金額や支払い方法によって、スープ皿の大きさが変わることもありません。使っていく内に自然に高級品になっていくこともありません(骨董品として

  • 市場の失敗 その1

    濱口先生が「労働者と使用者は決して対等ではない」で、こんなことを書かれています。少し長いのですが、引用します。 『東洋経済』2月16日号(特集「雇用漂流」)に掲載された私のインタビュー記事を、次の号が発売されたので、ここにアップしておきます。 特定の労働者を保護することによって、当の労働者自体にマイナスの影響が出ることはあり得る。保護対象外である労働者との格差を生むというのも、ある程度は正しいだろう。解雇規制に関する判例法理が形成されたのは1970年代。当時は正社員が中心で、パートやアルバイトなどの非正規社員は補助的な労働力だった。正社員の雇用を守るために非正規社員に先にやめてもらうということも、社会的な妥当性はあった。それが90年代以降、非正規社員が著しく増加し、社会状況が変化した。それに見合う形で、正社員の解雇規制を緩和し、非正規との調和を図っていくことは必要だろう。 それでは、労働者

  • 消費者主権

    「消費者主権」という言葉には、事実判断としての意味合いと価値判断的な意味合いの両方があります。 事実判断としては、自由な市場機構のもとでは、最終的には消費者が資源配分の決定権を持っているという事実を意味します。この場合には、消費者の購買力が、選挙の投票権のように社会の意志決定の基礎となる役割を果たすことになります。もちろん、この場合、消費者は自分の選好に従って、購買力を発動することを前提としています。したがって、消費者の選好が社会の資源配分の基礎になるわけです。 価値判断としては、ある経済の状態が他の経済の状態に比べて良いか、悪いかの判断の基礎に、個人の選好のみを置くべきだというものの考え方です。生産者や国も経済主体ですが、これらは個人の生活のための手段であり、それらが選好を持つとしても、それらを満足させることは目的ではないと考えています。 これに関連して、事実としての消費者主権の社会、つ

  • 資産と負債の区別ができない日本経済新聞

    今週の最悪の記事。3月19日の日経済新聞。「手当債頼みの退職金」「地方財政の新たな”火種”に」という見出しです。 全体としては地方自治体では「07年に支払われる退職金は都道府県だけで、軽く1兆円を突破する。」「一部は自主的に退職基金を設けているが、全額を賄えるだけの蓄えは無く、多くの自治体が「退職手当債」の発行を余儀なくされている。」「手当債はいつかは全額を自前で返さなくてはならない借金。地方財政は、また新たな”火種”を抱え込んだ。」というもので妥当な内容です。 しかし、途中が良くない。 「企業は退職給付引当金として資金を積み立てているが、現金収支が基の自治体会計には制度的な引き当て措置がない。」強調したのは平家です。 強調部分は正しくない。引当金というのは将来発生する費用(の現在価値)を帳簿上で表示したもので、これはあくまで負債です。 一方、積立金というのはもしあれば実態のある資産で

  • 所得と中絶

    「実質DDPを高めることが潜在実質GDP成長率を高めることに繋がるか?」で、景気と人口の変化の関係を調べてみました。 これに関連して、もう一つ考えてみます。所得と妊娠中絶の関係です。所得が高いと妊娠すれば、そのまま子供を産む、貧しいと中絶してしまうという可能性はありそうです。 そこで、都道府県別の一人当たり県民所得と人工死産率の関係を平成15年について調べてみました。データは平成15年度の県民経済計算から取った一人当たり県民所得(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/kenmin/h15/6_kenmin.xls)と平成15年の人口動態統計から取った人工死産率(http://wwwdbtk.mhlw.go.jp/toukei/data/010/2003/toukeihyou/0004652/t0098830/ME170_001.html)です。 両者に関係がある

  • 安倍政権の経済政策

    「実質DDPを高めることが潜在実質GDP成長率を高めることに繋がるか?」にecon-economeさんからコメントをいただきました。それに触発されてのエントリーです。 安倍政権の潜在成長率引き上げ政策を軸にいろいろな立場を整理してみようと思います。 まず、安倍政権の考え方は、素朴に市場メカニズムを信頼しているのではないかと言うところから始めます。この立場に立てば、短期的にはともかく長期的には市場メカニズムは有効に機能して、生産物の市場では潜在的な供給の水準で需給は一致し、労働市場では自然失業率が成立する。したがって、そのメカニズムがうまく働くように障害を除去しつつ、潜在成長率の引き上げを図っていけばよいということになります。その障害の候補は不必要な規制です。小泉政権でも不必要な規制をなくすとしていましたので、新政権としては、差別化のためにも(あるいは、小泉亜流と呼ばれないためにも、新味を出

    ryozo18
    ryozo18 2006/11/08
  • 実質GDPを高めることが潜在実質GDP成長率を高めることに繋がるか?

    econ-economeさんのエントリー(http://d.hatena.ne.jp/econ-econome/20061030/p2)とは逆の問題を考えて見ます。 潜在実質GDP成長率(面倒ので、これ以後は潜在成長率にします。)は、技術の進歩(その活用度)、資の成長、労働力の量的、質的な成長から決まるとされています。 では、現実の実質GDPが増加すると、潜在成長率は高くなるでしょうか。なお、この問題の立て方自体、経済が資源の完全利用を果たしていないことを前提にしたものだと考えています。資源が完全利用され、実質GDPが可能な最大限になっていれば、この問題は無意味ですから。 ひとつのルートは以前のエントリー(https://harutomo99.seesaa.net/article/200609article_14.html)で取り上げた、生産活動の活発化が労働力の質的向上をもたらし、同時

  • 景気回復と労務管理 その2

    「景気回復と労務管理 その1」で書いた低賃金の非正規労働者が多数いることを前提とした企業、業態は、労働市場がタイトになり低賃金では非正規労働者がいなくなると、経営困難に陥ります。 外部労働市場では、賃金は需給関係で決まります。需給が緩和すると急速に低くなり、タイトになると急速に上がります。内部労働市場も労働市場の需給の影響は受けますが、ある程度その影響を遮蔽することができます。 市場で賃金が上昇しているときに、自社の賃金を上げずにいると、人手不足になるか、労働者の質が落ちてしまいます。一旦、外部労働市場に依存する体質になると、外部労働市場から抜け出すのは相当な努力が必要です。 この性質を十分理解した上で、外部労働市場を利用していたらいいのですが、そうでないと外部労働市場を利用したつもりが、外部労働市場に飲み込まれる結果になってしまいます。 まあ、特定企業の問題ならいいのですが、問題は介護保

  • 夕張市の症例研究 その1 ナショナル ミニマムと地方分権

    夕張市が、もうすぐ財政再建団体になります。ここで、一種の社会実験のようなものが始まります。 まず、「ナショナル ミニマムと地方分権」についてで書いたの組み合わせの問題が分かります。 財政再建団体になれば、財政支出は極限まで削減されます。しかし、国民に必要不可欠な事業は行われるはずです。言い換えれば、やや、荒いのですが基準財政需要に相当するもの、あるいは法で市に支出が義務づけられたものと借金の返済になるはずです。 自主財源では、これを賄えないことは明らかですから、基準財政需要に不足する部分は、国民が面倒を見ることになります。具体的には、地方交付税交付金、補助金が中心になるでしょう。もちろん緊急性のないもの、例えば学校の校舎の建て替えなどは、先送りされるでしょう。 今後、夕張市の行う事業は、現在の日のナショナルミニマムが、実際にはどのようなものかを示すことになるでしょう。これまで、紙の上だけ

    ryozo18
    ryozo18 2006/10/16
  • 「「「発達障害」に予算は付くか?」について」について

    「「「発達障害」に予算は付くか?」について」について に、BUNTENさんから、TB(http://d.hatena.ne.jp/BUNTEN/20060902)をいただきました。 相当意見の違いは残っているのですが、ちょっと簡単には解消できないなと思います。一つだけこれは誤解かなと思うことが。 現在は、法律上、身体障害、知的障害、精神障害とは違うカテゴリーとして、発達障害が設定されています。(両方に該当する人がいる可能性はありますが。)発達障害は身体障害、知的障害、精神障害の一部なのではありません。その意味では発達障害は身体障害、知的障害、精神障害と並ぶカテゴリーです。一方、上肢障害は身体障害の一部ですから、これは身体障害の下位カテゴリーです。 私はこの意味で「下位」カテゴリーという言葉を使っていますし、飯田先生も同じだろうと思います。 一方、施策の面では、ご指摘のように差があります。身

    ryozo18
    ryozo18 2006/09/03
    『下位』を『サブ』と呼べば無問題/というわけでもなかった。ほんとに実質的な意味で同等に扱うべきだという意見らしい
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