円の対ドル・レートは昨年夏頃から80円割れの水準が常態化し、対ユーロも100円前後の水準が続いてきた。円高は、高い法人税率、電力不足等とともに日本企業の事業環境を厳しくしている「六重苦」の1つとされており、過度の円高に伴う製造業の海外移転の加速、国内の空洞化が懸念されている。こうした中、デフレ克服とともに円高を是正するため、一層の金融緩和を求める意見も少なくない。 現在の円レートおよびその国内経済への影響については、産業界や政策実務の見方と経済学者の評価の間にギャップがあるように見える。たとえば、経団連は「円は歴史的な高値圏で推移している」とした上で、「現在の円高水準への対応は、国際的に高い競争力とシェアを誇る産業群ですら、極めて困難な状況である」と述べている(経団連「成長戦略2011」)。経済産業省は、産業構造審議会の報告書(2012年6月)の中で、「現状の円高水準が継続すると、素材型製