清野 由美 ジャーナリスト 1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。 この著者の記事を見る
清野 由美 ジャーナリスト 1960年生まれ。82年東京女子大学卒業後、草思社編集部勤務、英国留学を経て、トレンド情報誌創刊に参加。「世界を股にかけた地を這う取材」の経験を積み、91年にフリーランスに転じる。2017年、慶應義塾大学SDM研究科修士課程修了。英ケンブリッジ大学客員研究員。 この著者の記事を見る
いよいよ本連載も今回で最後になる。日本を取り巻く安全保障環境を地理的な面から地政学的に考えてみたい。 日本は地政学的に見てどのような位置づけにあるのか――いま一つ分かりづらいと感じている方がいるかもしれない。 その理由は大きくわけて2つある。一つは地政学、とりわけ古典地政学で使われる「シーパワー」や「ランドパワー」の概念が、現代のわれわれにとって縁遠いものになってしまっているからだ。戦後の特殊な安全保障環境の中で、日本のメディアや教育界が軍事や戦略に関する議論そのものを忌避してきたことが背景にある。 もう一つは、地政学的なものの見方に、われわれ日本人がいまひとつ慣れていない点にある。地政学的なものの見方は極めて特殊なものだ。とりわけ、帝国主義を源流とする「上から目線」の、スケールの大きいとらえ方に違和感を覚える方がいるだろう。 ところが、現代のようにグローバル化が進むと、日本は以前よりも大
振り返れば2012年8月、韓国・李明博前大統領の竹島(韓国名は独島)上陸をきっかけに日韓関係の悪化は顕著になった。政治、経済など多岐にわたる分野で悪化が見られたが、特に分かりやすかったのが韓流ブームの沈静化ではないだろうか。地上波で放送されていた韓国ドラマは減少し、音楽番組からはK-POPスターが消えた。日本では2003年にドラマ「冬のソナタ」が放送されたことで沸き上がったとされる韓流ブームだが、はたして未来はあるのか。世界韓流学会の総務理事を務める高麗大学オ・インギュ教授に話を聞いた。 オ・インギュ(呉寅圭)氏 1962年生まれ。米ルーズベルト大学卒、オハイオ州立大学政治学修士課程、オレゴン大学社会学博士課程修了。ニュージーランド国立ワイカト大学助教授、カリフォルニア大学バークレー校客員教授、トルコ国立中東技術大学客員教授、英ブリストル大学副教授などを経て、現在は高麗大学民族文化研究院教
世界でも有名になった韓国の「反日」。だが実は「卑日」と呼ぶべきものに変容している。これを見落とすと、日本は外交を誤る。 セウォル号と反日 前回の「慰安婦を無視されたら打つ手がない」の最後のくだりに「反日」は「卑日」に変わった、との指摘がありました。そこを詳しく聞きたいのです。 鈴置:韓国の日本に対する異様な行動は、表面的には「相も変わらず」に見えます。ただよく見ると、それを突き動かす動機ががらりと変わっているのです。 いい例が、2014年4月に起きた旅客船「セウォル号」沈没事故です。事故の直後に「また、これをネタに反日をやってきますかねえ」と、周囲の日本人から聞かれました。 ええ、多くの人がそう考えたと思います。 鈴置:「セウォル号」の船体は、日本の海運会社が廃船にしたフェリーを韓国の会社が買って使っていたものでした。 そこで韓国人が「粗悪な中古船を日本が売りつけた」と責任転嫁してくるだろ
韓国で「対日強硬策を見直すべきだ」との意見が出てきた。いくら「慰安婦」と叫んでも、日本から無視されたら打つ手がないことに気づいたからだ。 歴史カードを手放そう 韓国で「対日新思考外交」の主張が始まった、とのことでしたが(「『アサヒ』が駄目なら『クワタ』がある」参照)。 鈴置:保守論壇の大御所で、朝鮮日報顧問の金大中(キム・デジュン)氏が「のどが乾いた方が井戸を掘れ」(2014年12月9日、韓国語)を書きました。 これが「新思考外交」――日本との外交に歴史を持ち込むのはやめよう――を訴える代表的な記事です。以下が記事の最後の文章の全訳です。 今さらの話だが、日本との過去を言挙げし、歴史を話すことがどれほど愚かで無意味かを悟った。 韓国の外交的な武器である「歴史カード」を手放そう、ということですね。なぜ突然、そんな意見が出てきたのでしょうか。 鈴置:金大中顧問は記事の冒頭で「日本は韓国との関係
今回は、ある米国人女性がネット上で投げかけた相談を取り上げたい。26歳の匿名女性がネット上の人生相談で、「早期退職したい」と書いたことが波紋を広げ、何千人もが書き込みをする事態になっている。 相談内容と回答者の見解、さらにコメントを示しながら、イマの米国人男女が抱える思いを考察してみたい。 まず相談内容を簡単に紹介する。 「私はIT産業が盛んな都市に住んでいる26歳の女性です。大学を卒業して以来、社会福祉の仕事をしていて、現在はホスピス(終末期ケアを行う施設)で働いています。ただ仕事でさまざまな家族に接しているうちに寂寥感がつのり、ノイローゼの一歩手前です。転職も考えましたが、やりたい仕事が見つかりません。それなら、いま一緒に暮らしている恋人のために炊事や掃除をして生活したいと思っています。彼はそれでも構わないと思っているようです。26歳で退職というのは早過ぎますか」(要約) 日本では勝ち
鹿児島市内を歩いて、どれだけの人がこのことに気づくだろうか。 「寺が少ない」――。 文化庁の『宗教年鑑』によれば、鹿児島県内の寺院数は489カ寺だ。例えば、鹿児島とほぼ同等の面積の山形県では1485カ寺、また広島県では1737カ寺である。 鹿児島県の人口10万人に占める寺院数(寺院密度)は、29.1カ寺。全47都道府県中の順位で言えば、寺院数が42番目、寺院密度が44番目と、確かに低水準ではある。 廃仏毀釈が激しかった鹿児島県 それには理由がある。 「鹿児島と言えば、西郷隆盛や大久保利通など、明治維新を主導した偉人を輩出した土地柄で一見、華やかな印象があります。ですが当時、この地域が大きなタブーを犯したことは、県民ですらあまり知らない事実なのです。いわゆる廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)です。今でもその後遺症を、鹿児島は引きずっています」 こう語るのは鹿児島県民俗学会会員の名越護さん(72歳)
2016年1月にスタートする「マイナンバー」制度。国民一人ひとりに番号を割り振り、税や社会保障などの分野で活用する制度で、国内のあらゆる企業が対応を迫られる。導入までほぼ1年に迫ったが、準備は遅々として進んでいない。 マイナンバーの罰則は厳しい。取り扱いをおろそかにすると従業員が逮捕されたり、企業が罰金刑に処せられたりする恐れもある。さらに2016年からは、アルバイトを雇う際にもマイナンバーが必須となる。日経ビジネスオンラインで3回にわたり「マイナンバー制度で企業はどう変わる」を連載した、野村総合研究所の梅屋真一郎氏に話を聞いた。 (聞き手は小笠原啓) 2016年1月から「マイナンバー制度」(行政手続番号法)がスタートします。導入すると何が変わるのか、私も含め、理解していない人が多いのではないでしょうか。 梅屋:それではまずいんですよ。状況は極めて切迫しています。マイナンバーはあらゆる企業
(前編から読む) 前編では、中国で出会った「システムの不備」に纏わる話をあけすけに編集担当Y氏にしていたら、彼から「中島さん、なんだか最近、中国に取材に行くたびに、どんどん中国が嫌いになっていっていません? 私、今日はあまりの毒舌ぶりに正直いって呆れましたよ!」と言われて、どきっとしたことをお話した。 中国では、公共の施設はすべてが管理する側の視点で設計されており、使う人がどんなに不便だろうが、そんなことは知ったこっちゃない、というほど使いにくい。障害者用のサービス(点字ブロックなど)もあることはあるが、ブロックは途中で寸断されていたりする。公共の乗り物を利用しなければならない人々は、いつもそのインフラに我慢しなければならない。 でも、私はずっと不思議に思っていたことが2つあった。1つ目は「中国人はこのシステムにあまり頭にきている様子がないのだけど、どうしてだろう?」ということ。2つ目は「
気になる記事をスクラップできます。保存した記事は、マイページでスマホ、タブレットからでもご確認頂けます。※会員限定 無料会員登録 詳細 | ログイン スコットランドに行って、例えば古都エディンバラのオールドタウンを歩けば、タータンチェックのスカートを履き、バグパイプを吹く観光客向けのアトラクションに必ず出くわすはずだ。そして、私たちはそこに「スコティッシュネス(スコットランドらしさ)」をみて、スコットランドに来たという安心と満足を得ることになる。 このスコットランドがイギリス(正式には『グレートブリテン及び北アイルランド連合王国』)からの「独立」を求めた住民投票は、9月に55%で否決されるに至った。 本コラムで指摘されてきたように、スコットランドが住民投票に至ったのは複合的な要因が絡んだ結果だった。1990年代後半から地方分権と自治権付与の流れが生まれ、これに2000年代の不況と緊縮財政が
帝塚山学院大(大阪府大阪狭山市)に、複数の脅迫文が送付された。 内容は同大学の人間科学部に教授として勤務する元朝日新聞記者(67)の辞職を要求するものだ(ソースはこちら)。 脅迫のターゲットとなった元記者は、従軍慰安婦報道を検証する朝日新聞の8月の特集記事で、吉田清治氏(故人)の虚偽証言に関する記事を最初に執筆したとされていた人物で、本人は文書が届いた日に教授を辞職してたという。 脅迫状は、同じく朝日新聞の元記者(帝塚山大学の教授とは別人)が非常勤講師として勤務する北星学園大学(札幌市厚別区)にも届けられていた(こちら)。 道警札幌厚別署によると、5月29日と7月28日、学長や学園理事長宛てに「元記者を辞めさせなければ天誅(てんちゅう)として学生を痛めつける。釘(くぎ)を混ぜたガスボンベを爆発させる」などと印字された脅迫文が届き、いずれも虫ピン数本が封筒に同封されていたのだそうだ。 つい先
ここ1~2年、検索サイトの注目キーワードの上位に「中島みゆき」が挙がってくる頻度が増えています。それで、ファン歴30年の私(途中浮気なし。←古いファンを自慢する人がいますが、大抵の人は途中抜けしているので、ここ結構重要だと思います)も気になってクリックしてみると、 「中島みゆきの「糸」を聴いて泣いた」 「中島みゆきの糸はCMやカバー、何で聞いても落ち着く」 「中島みゆきの糸を聞いていたら結婚したくなった~」 「中島みゆき「糸」まぢ神曲!」 (以上、原文ママ) といったコメントが多数ヒットするのです。これは70年代から80年代前半に、“フラれ歌の女王”として大ヒットしていた時期のイメージを抱いている人ならかなり意外ではないでしょうか。当時は、例えば「好きな歌手は?」と聞かれて「中島みゆき」と答えようものなら、「あ、暗いんですね」とか無神経に言われ、まるで黒魔術が趣味のように表立って言明できな
小屋 洋一(こや・よういち) (株)マネーライフプランニング代表取締役 CFP(R)、1級ファイナンシ ャル・プランニング技能士、首都圏ファイナンシャル・プランニング技能士会理事。 慶應義塾大学経済 学部でファイナンスを学び卒業後、リース会社に就職。2004年から不動産ベンチャー企業にて営業、企画を担当しながら不動産投資実務についても研究。2008年個人のファイナンシャルリテラシーの向上をミッションとした株式会社マネーライフプランニングを設立。現在個人を中心にコンサルティング業務を行う。投資勉強会や株式投資クラブの運営など、活動の範囲は幅広い。 主な著書に『35歳貯金ゼロなら親のスネをかじりなさい』(すばる舎リンケージ)、『くらしの相続Q&A~もめない相続のために』(新日本法規 共著)、『いわゆる「当たり前の幸せ」を愚直に追い求めてしまうと、30歳サラリーマンは、年収1000万円でも破産し
3人に1人は地方出身者で構成されるとも言われる大都会・東京。その中には、地元の高校を出て上京後、大学受験・就活戦争を乗り越え、努力の末に今の暮らしを手に入れた人も少なくない。だが、その割には、都会生活が必ずしも薔薇色でないのもまた事実。ストレスが強まる一方の職場・通勤環境や貧弱な子育てインフラを前に、「あの時、上京せず地元に残った方が幸せな人生だったのでは」と思ったことがある人も案外多いのではないだろうか。 そんな層にとって非常に気になる本が出版された。博報堂・原田曜平氏の『ヤンキー経済』だ。地方出身大卒者とは対極に位置するとも言える“ヤンキー層”を研究した本書では、その旺盛な消費力と共に、彼らの充実した生活や“体感的幸福度”の高さを緻密に描写。その内容は、地方出身大卒者に「もしかして彼らの方がずっと幸せ!?」と思わせるのに十分なものだ。詳しい話を原田氏に聞いた。 (聞き手は鈴木 信行)
2013年末の安倍晋三首相の靖国参拝。韓国は「しめた!」と叫んだ。これを言い訳に米韓関係の悪化を食い止められると思ったからだ。だが年が明けてから、韓国には失望感が広がった。 参拝を世界で一番喜んだ韓国人 12月26日に安倍晋三首相が靖国神社を参拝して、世界で一番喜んだのは韓国人だったのではないか。 12月6日に米国のバイデン副大統領から米中間での二股外交を露骨に指摘されたうえ「米国側に戻れ」と言い渡された朴槿恵大統領。韓国人はすっかりしょげ返っていた(「北朝鮮に『四面楚歌』と嘲笑された韓国」参照)。 そこに靖国参拝。駐日米国大使館は直ちに「失望した」と論評、米国務省も同じ表現で日本を批判した。韓国には「米国に叱られたのは我が国だけではない」との奇妙な安心感が広がった。そして「これは米韓関係改善のテコに使える」との期待が一気に盛り上がった。 韓国は、日本との軍事協力を強化するよう求める米国に
「バイトテロ」で企業が倒産に追い込まれる事態がついに発生してしまった。 東京都多摩市。東京都下の丘陵地帯に造成された多摩ニュータウンにあるそば屋の「泰尚(たいしょう)」。幹線道路沿いの好立地で営業していたにも関わらず今年8月に閉店。東京地裁に破産を申請して、10月9日に破産手続き決定を受けた。 同社は前社長が亡くなった昨年9月にそれまで3カ所あった店舗を1店に縮小しての再建中だった。その最中、思いもかけない事件が起きた。 アルバイト店員の男子大学生が店内での悪ふざけ画像をインターネット上に公開したのだ。「洗浄機で洗われてきれいになっちゃった」というコメント付きで洗浄機に横たわったり、顔を突っ込んだりした画像をツイッターで投稿。さらには流し台に足をかけたり、胸をはだけ、店の茶碗をブラジャーのように胸に当てたりした画像など、目覆わんばかりの画像も投稿していた。 問題行為が発覚して、ネットが「炎
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