ブックマーク / bakhtin19880823.hatenadiary.jp (686)

  • 【愛の◯◯】同学年男子にレーザービーム実験 - 音楽と本、それからそれから……。

    早く起きて、ベッドから出る。 少しだけ寝不足。 ジャージのままキッチンに向かう。トーストを焼いて、サラダを盛り付ける。牛乳をコップに注(そそ)いで、ヨーグルトを添えたら、朝の出来上がり。 べたあとで着替える。まだ7時過ぎ。だけど、アルバイトに行かなければならない。 × × × 『高校時代に男の子とつきあったことは無いの?』 そんなふうに愛に訊かれて、 『3年間で、2回』 と当のことを答えた。 愛に答えてしまったことが尾を引いていて、高1のときと高3のときの苦い経験をふとした弾みで思い出してしまうときがあって、つらかった。 愛を責めるつもりは無い。あの娘(こ)に悪気は無かったんだから。 アルバイトが終わって乗り込んだ電車の中で、 『今でも、『踏み込む』のが怖い。この先、異性に対して『踏み込む』ことはあるんだろうか?』 と思った。 × × × 第二文学部の講義開始まではまだ時間があるから

    【愛の◯◯】同学年男子にレーザービーム実験 - 音楽と本、それからそれから……。
    s-johnny
    s-johnny 2024/01/17
  • 【愛の◯◯】踏み込めなかった高3の冬 - 音楽と本、それからそれから……。

    高校時代の、2度目の彼氏の話。 × × × 3年の2学期初めのホームルーム。 クラス委員長にすぐさま立候補したのが原(はら)くんだった。 他の立候補が無かったのでクラス委員長は原くんにすんなり決まったけど、クラス副委員長にはだれも手を挙げない。 仕方なくわたしが挙手した。 2学期初めだったので早い放課後で、わたしは中庭の椅子に座って紙パックのオレンジジュースを飲んでいた。 丸太を半分に割って作った椅子。わたしは、オレンジジュースを飲み切ったあともその椅子から立ち上がらず、バッグから文庫を取り出そうとしていた。 しかし、背後から、 「大井町(おおいまち)さんだ」 という男子の声がしたので、すごくビックリして文庫を地面に落としてしまった。 慌てて文庫を拾って振り向く。 クラス委員長に就任した原くんが立っていた。 「原くん!? び、ビックリするでしょっ、いきなり声掛けされると。しかも原くん

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    s-johnny
    s-johnny 2024/01/16
  • 【愛の◯◯】梢さんは弱々しい声を吐いて……。 - 音楽と本、それからそれから……。

    日曜日。今日も仕事休み。朝の8時30分から10時00分までニチアサキッズになりきって、それからマンションを出て母校のキャンパスへと向かう。 おれの出身大学はマンションからそう遠くはなく、徒歩でもたどり着くことが可能なのである。 懐かしの学生会館に入り、『MINT JAMS』というサークルのお部屋の扉をノックする。 現役3年生の笹田(ささだ)ムラサキが既に入室していた。ムラサキとは前もって日曜に会うことを約束していた。 おはようの挨拶を交わして、互いに近況を報告する。それから、ムラサキがこの部屋で見つけ出したという15年以上前の『ロッキング・オン・ジャパン』を2人で見ていく。表紙は宇多田ヒカルであった。 宇多田ヒカルも当然若いが、雑誌内でインタビューに答えている他のミュージシャンも相当若い。今やアラフォーの人間がハタチそこそこなんだもんな。 『ロッキング・オン・ジャパン』を前にして隣り合って

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    s-johnny
    s-johnny 2024/01/14
  • 【愛の◯◯】甘えて、「100%」になる - 音楽と本、それからそれから……。

    土曜日。 朝ごはんのあとで、ダイニングテーブルでアツマくんと向かい合ってコーヒーを飲んでいる。 「あなた、ずいぶん侑(ゆう)に慕われてるみたいじゃないの」 わたしがそう言うと、彼は、 「そうともいえるかもな」 と答えて、コーヒーをグイッと飲む。 彼がマグカップを置くのと同時に、 「慕われてるのは、いいと思う。でも、慕われてる『からこそ』、あなたには気をつけてもらいたいコトがあるの」 「えっ。……どんなコトを」 彼の顔をジトリ……と見て、 「あの娘(こ)も案外デリケートだから。なるべく、デリケートな部分に触れないようにしてあげて?」 やや困惑の彼は、 「デリケート?? もっと、具体的に……」 「自分で考えるのよ。一人前のオトナなんだから、あなたは」 さらに困惑の彼。 ヒントを出そうかしら? いいえ。敢えてヒントは出さない。 アツマくん、なんだかんだで、女の子に接するのには慣れてるんだから。そ

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    s-johnny
    s-johnny 2024/01/13
  • 【愛の◯◯】「男女共学」という、泣き所 - 音楽と本、それからそれから……。

    アツマくんと侑(ゆう)がダイニングテーブルで向かい合っている。 「愛の面倒見てくれてありがとな、侑ちゃん」 「どういたしまして」 「ちゃんと言うこと聞いてたか? 愛は」 「ハイ。いい子にしてましたよ」 ちょっとちょっと。 なんだかコドモ扱いっぽくないかしら。 「アツマさん。作ってくれたボロネーゼパスタ、すごく美味しかったです」 え。 侑……。彼が作った夕、ホメるの!? 「すごく美味しかったので、作りかたを教えてほしいかも」 そんな。 「教えてやるよ。いつでも」 「嬉しいです♫」 高校生みたいな喜びかたしてるじゃないの……侑。 × × × 「どうしてあなたはそんなにアツマくんをリスペクトできるの」 寝室のダブルベッドで枕を抱きながら侑に訊く。 右隣の侑がゴロン、と寝転んで、 「いろいろ魅力的なんだもの」 と言ってから、 「もっともあなたは、わたしよりも100倍アツマさんの魅力を知ってると思

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    s-johnny
    s-johnny 2024/01/12
  • 【愛の◯◯】好き勝手に愛を見守る - 音楽と本、それからそれから……。

    「おはようございます、アツマさん」 「おー良く来てくれた、侑(ゆう)ちゃん」 「愛はどんな感じですか?」 「ソファに座って、くたびれてるよ」 リビングのところまで行ってみる。 アツマさんが言った通り、ソファに身を預けてグターッ、となっている愛。 「愛、おはよう」 声をかけたら、 「おはよ」 と、チカラ無き声で返答。 「どうしてあなたがそうなってるのかは、あとで訊くわ」 そう愛に告げて、 「アツマさん、任せてください」 と、出勤時刻の愛のパートナーに言う。 「迷惑かけちゃうね」 「いえいえ、そんな」 「ま、面倒くさいことになってるが……おれが帰ってくるまで、頼む」 ここで愛が、 「……面倒くさいってなによ」 とグチる。 「たしかに『面倒くさい』は言い過ぎたかもしれんな。すまん」 「あ、謝るのが早すぎない?!」 「愛よ」 「ちょ、ちょっとっアツマくんっ」 「侑ちゃんにしっかり甘えるんだぞ」 唖

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    s-johnny 2024/01/11
  • 【愛の◯◯】麻婆丼の「王子さま」 - 音楽と本、それからそれから……。

    文学部キャンパス。 開店前のカフェテリア。 わたしの左隣の椅子の古木紬子(ふるき つむぎこ)ちゃんが向かい合っているのは、カフェテリアスタッフの及川太陽(おいかわ たいよう)くん。 うつむき通しの紬子ちゃんに、 「朝っぱらから景気が悪いな」 と腕を組みながら太陽くんが言う。 紬子ちゃんは、か細い声で、 「社長令嬢である私に向かって『景気が悪い』なんて言わないでよ」 「おいおいおい。今日の古木ダメダメじゃねーか」 依然うつむく紬子ちゃんに、太陽くんは、 「俺には大学のシステムは良く分からんが、留年のピンチなんだってな」 「……」とうなだれる紬子ちゃん。 太陽くんへの対抗心が消えかかってしまっている。 彼女の沈みぶりを目の当たりにして、太陽くんは少し戸惑ったような表情に。 だけど、彼は両膝を強くバン!! と叩いて、 「古木」 と呼びかけて、それから、 「おまえのためにひと肌脱いでやる」 と力強

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    s-johnny 2024/01/10
  • 【愛の◯◯】プリキュアみたいに折り合うべきよ - 音楽と本、それからそれから……。

    川又ほのかさんが、三好達治の詩集を読んでいる。 「ほのかちゃん凄いね。三好達治なんて読んでる」 そう言ったのは、川又さんの隣に座っていた板東なぎさちゃんだった。 「えっ……。す、すごいかな?」 やや動揺の川又さん。 「100パーセントの文学少女だ」 となぎさちゃん。 「ひゃ、100パーセントってなに」 「100パーセントは100パーセント」 「答えになってないよっ、なぎさちゃん」 「しかも、私学(しがく)の雄(ゆう)の文学部」 呆然となりかかっている川又さんに、 「もっと誇ってもいいと思うよ? ほのかちゃんは」 となぎさちゃん。 微笑ましいやり取りだ。 さて川又さんはなぎさちゃんから眼を逸らし、三好達治をテーブルに置いて、今度はヴェルレーヌの詩集を手に取って読み始める。 「うわぁ、ヴェルレーヌだ」 オーバーリアクションでなぎさちゃんが言う。 「三好達治とヴェルレーヌが合わさって、文学少女の

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    s-johnny 2024/01/07
  • 【愛の◯◯】いつも頼りないカレシが主体性を持ったら - 音楽と本、それからそれから……。

    「巧(たくみ)くん!」 「んっ? なに、なぎささん」 「明後日がなんの日か知ってるでしょ?」 「祝日」 「あーもうビミョーに違うっ」 「え」 「祝日の、名前っ!」 「あ」 「ちょっと!! ひらがな1文字の呟きを多用するのはやめて」 「えっ……『多用』って」 「わかるよね?? 明後日の祝日の名前」 「んーっと。成人の日か」 「はい正解。わたしたちに大いに関係がある日」 「ぼくもなぎささんも新成人だもんね」 「成人式、だけど」 「だけど?」 「わたしと巧くん、別々の成人式になっちゃう」 「それは仕方ないよ。住んでる自治体違うんだし」 「ねえ巧くん。こっちの住民には、なってくれないの」 「そ、そりゃムチャだ」 「巧くんがわたしの自治体に引っ越してきたら、一緒に成人式出られるのに!」 「いや……だいいち、手続きができないでしょ。土曜日だから、役所はたぶん閉まってる」 「役所に行ってみなきゃわかんな

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    s-johnny
    s-johnny 2024/01/06
  • 【愛の◯◯】アカ子の部屋にお泊まりで◯◯ - 音楽と本、それからそれから……。

    「蜜柑さん、また『磨きがかかってた』」 「そう? さやかちゃんは蜜柑に甘いのね」 「アカ子が甘く無さ過ぎるんだよぉ」 「憧れなのね、蜜柑が」 「うん」 「蜜柑の部屋に行ってみる?」 「……ちょっとそれは、勇気出ないかな」 「あら。あなたらしくないのね」 「アカ子がついてきてくれるのなら、いいけど」 「1人で行かないと意味がないわよー」 アカ子のいじわる。 蜜柑さんの部屋に2人きりなんて、極度に緊張しちゃうじゃん。 蜜柑さんルームに行く代わりに、アカ子ルームのあちらこちらに置かれているぬいぐるみを眺め回す。 ぬいぐるみは全てアカ子のお手製だ。 お手製ぬいぐるみがまた増えた気がする。 「コリラックマが増殖してるじゃん」 コリラックマが3匹になっているのだ。 「コリラックマは作りやすいのよ」 「へぇ。わたし手先があまり器用じゃないから、ぬいぐるみの作りやすさとかよく分かんないけど」 「お裁縫はし

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    s-johnny
    s-johnny 2024/01/05
  • 【愛の◯◯】葉山&藤村を向こうに回して…… - 音楽と本、それからそれから……。

    「葉山、今日はおまえが主役だ」 「え。どういうこと……戸部くん」 「早くソファに行けよ。とびきりのクリームソーダ作って持ってくるから」 「わたしが主役な理由は答えてくれないの」 「答えてやらん」 「そんな!」 「クリームソーダえばおまえの疑問も消し飛ぶ」 × × × でかいグラスに入った特製のクリームソーダを葉山のもとまで運搬する。 おれの言動にいまだ疑念を持っている様子の葉山。しかし特製クリームソーダの誘惑に負け、スプーンを手に取る。 クリームソーダのてっぺんのバニラアイスをった途端に、葉山の表情が一気に柔らかくなった。 もうひとりの邸(いえ)への来訪者たる藤村が、となりの葉山に、 「はーちゃん幸せそう。よっぽど美味しいんだね」 照れ混じりの笑顔で葉山が、 「だって美味しいんだもん。今日のはいつも戸部くんが作ってくれるクリームソーダよりも美味しい」 「特製だからな」とおれ。 「サービ

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    s-johnny 2024/01/03
  • 【愛の◯◯】利比古くんを過小評価していたんだ - 音楽と本、それからそれから……。

    廣松渉の『新哲学入門』なるを読んでいたおねーさんが、ぱたん、とを閉じて、彼女の真向かいのソファに座っている兄貴に、 「アツマくん。は読まないの?」 トボケた眼でスポーツ新聞を見ていた兄貴は、 「愛。急かさないでくれたまえよ」 と不可解過ぎる口調でおねーさんに言う。 「急かすってなによ。急かしてないわよ」とおねーさん。 「スポーツ新聞をじっくりと読んでいくのも、読書の前のウォーミングアップになるんだ」と兄貴。わけがわからない。 おねーさんもわたし同様にわけがわからない様子で、 「あなた言ってなかった!? 『三が日の間(あいだ)に必ず1冊読み終える』って」 しかし愚かなる兄貴は、 「そんなこと言ったっけ」 「び……ビリビリに破くわよ、そのスポーツ新聞」 怒(いか)り始めたおねーさんに構わず、 「次に読む人のことを考えろよ。破いちゃったら読めなくなるだろ? 読みたい人は他にもきっと居るはず

    【愛の◯◯】利比古くんを過小評価していたんだ - 音楽と本、それからそれから……。
    s-johnny
    s-johnny 2024/01/02
    本年も引き続き、宜しくお願い申しあげます🙇
  • 【愛の◯◯】重大な変化。苦しくなるぐらいに。 - 音楽と本、それからそれから……。

    午前10時のダイニング・キッチン。 わたしはサナさんと隣同士でダイニングテーブルに座っている。 前方に座っているのは流(ながる)さん。 「大掃除もだいたい終わったね、流くん」 流さんより年上のサナさんが言った。 「そうですね。サナさんが力持ちだったから助かりました」 「ちょっとちょっとちょっと流くんッ」 「え!? ぼくマズいこと言いました!?」 「わたしがそんなに怪力だって認識してるの」 「か、怪力とまでは、言ってないですけど」 「そんなに印象的なんだね。小柄な体型とは裏腹の、わたしの腕っぷしの強さが」 まあまあ。 「まあまあサナさん。そのぐらいで勘弁してあげましょうよ。流さんにパンチを飛ばすような勢いでしたよ」 「マジでロケットパンチしちゃいたいかも」 「物騒ですって。大晦日なのに」 溜め息をついてからサナさんは、 「あすかちゃんは優しいんだね」 「大晦日じゃなかったら、もっと流さんには

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    s-johnny
    s-johnny 2023/12/31
  • 【愛の◯◯】読んだ本の総数よりも大事な◯◯ - 音楽と本、それからそれから……。

    もう少し眠っていたかったところを愛に叩き起こされた。 朝後、即大掃除。 「シャッキリしないわねー。ほんとーにもう」 緩慢に窓ガラスを拭いていたら、容赦なき声が飛んでくる。 「眠いの!?」 おれは正直に、 「ねむい」 「あなたの背中にパンチしてあげようかしら」 「なんだよ。暴力で眠気覚ましってか」 「暴力じゃない! 愛情の籠もったパンチよ」 愛が窓際に近寄ってくる。 「ま、たまにはおまえにパンチされるのもアリかもな」 「パンチされることに前向きなのね」 「早く背中にパンチをかましてくれ」 「じゃあ、いくわよ?」 背後で愛が握りこぶしを引く気配がする。 気配がしたと思ったら、叩かれた。 「今年最後の気パンチだったな」 「どうよ? 眠気はおさまった?」 「ちょっぴし」 「パンチされ足りないの」 「んーー」 「び、微妙な反応はNG」 クルリと振り向き、愛を見下ろす。 右手を愛の頭頂部に置き、撫

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    s-johnny
    s-johnny 2023/12/30
    おはようございます。本年中はありがとうございました。来年も引き続き、宜しくお願いします🙇
  • 【愛の◯◯】愚痴りたいし、甘えたい - 音楽と本、それからそれから……。

    阿佐ヶ谷駅まで来た。 サークルOGの秋葉風子(あきば ふうこ)さんを待つ。 『わたしんちで忘年会しようよ』 そういうメッセージを彼女はLINEで送ってきた。 『忘年会』という表現を彼女は使っているけど、たぶん参加者は、わたしと秋葉さんの2人だけ。 『忘年会』の3文字に籠められた意味はなんなのかしら。 「やっはろ~~」 右手を大きく振りながら、秋葉さんがわたしに近づいてくる。 「こんにちは秋葉さん。面白い挨拶ですね」 「わたしの声が東山奈央みたいな声だったら、もっと良かったんだけどね」 「……えっ?」 「ごめんごめん忘れて。知りたくなったら『俺ガイル』のアニメを観て」 × × × 「羽田さん」 横を歩きながら秋葉さんは、 「寒いね」 と。 「寒いですよね。雪が降っちゃうかもしれない」 とわたし。 秋葉さんは、 「雪が降るのは困るな。わたしのココロにも雪が降ってきちゃいそうで」 思わずわたしは

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    s-johnny
    s-johnny 2023/12/29
  • 【愛の◯◯】敢えて弱みを突く - 音楽と本、それからそれから……。

    JR山手線某駅の東口。 麻井りっちゃんが眼の前に立っている。 「久しぶり、愛さん」 「りっちゃん、久しぶり~~!!」 やり取りをしつつも、わたしはりっちゃんの身だしなみを精細に見ていく。 うん。 全体的にオシャレよね。 部分部分がきちんとしてるから、全体がオシャレに見えるんだわ。 140センチ台の小柄な子だけど、体型にジャストフィットしてる感じの服装。 きっと育ちが良(い)いんだと思う。 「りっちゃん。あなたって、わたしよりもだいぶ身だしなみに気を配ってるのね」 「え?? どういうこと、愛さん……」 「わたしなんかより全然コーディネートが決まってるってことよ」 「そ、そんなことない。愛さんのほうが100倍キレイだし」 「『100倍』とか言わない言わない」 うつむき加減の彼女に対し、 「ステキよ。ステキだわ」 と言ってあげる。 × × × 「帰省したばっかりで、くたびれが残ってない? そこが

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    s-johnny
    s-johnny 2023/12/26
  • 【愛の◯◯】靴下をプレゼントして、それからそれから。 - 音楽と本、それからそれから……。

    冬のカラスが騒ぎ立てている。そんな朝。 窓の光が爆睡中のアツマくんに降り注いでいる。 朝のカラスよりもだらしないアツマくんの掛け布団を剥ぎ取る。 「ふみゃ」 謎の擬音を発してアツマくんが眼を覚ます。 寝ぼけさせるわけにはいかず、身を起こした瞬間に、彼の両肩をがっちりと掴んで、 「おはよう。さっそくだけど、顔を洗いなさい」 と指令。 「今何時? もう少し寝かせてくれんの」 「ダメよ。寝させない」 両肩を押さえつけて、 「仕事が休みでも早く起きてよ。クリスマスなんだから」 「だけど、いちばん盛り上がるのは昨日なんだし、クリスマスは9割終わってて……」 「バカじゃないのあなた!?」 早々に『バカ』というコトバを発してしまったわたしは、アツマくんを揺すり始め、 「わたしたちのクリスマスはまだ始まってもいないじゃないの」 揺すられても依然眠そうな彼は、 「北野武の映画の名ゼリフみたいなこと言うのな」

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    s-johnny
    s-johnny 2023/12/25
  • 【愛の◯◯】夜景を見ながら弄(もてあそ)ばれて - 音楽と本、それからそれから……。

    日曜日なんだけど、学生会館に行って、『MINT JAMS』のサークル室に入った。 しかし、卒業間際の上級生の八木八重子(やぎ やえこ)さんがやって来て、 「日曜の朝から張り切って学館(がっかん)に来るなんて、サークル依存度がまた上昇しちゃったみたいだねえ」 と、さっそくぼくを攻撃してくる……。 「八木さんだってサークルに『日曜出勤』じゃないですか!」 反撃するが、 「わたしは『いつも』じゃない。ムラサキくんは『いつも』だけど」 「先週の日曜は来てないですから」 「あやしいなあ」 「疑わないでくださいっ」 ぼくをジーッと見てくる八木さんは、 「アリバイ崩しがしてみたい」 と……いつの間にか、探偵ごっこを。 隣のサークル『虹北学園』の幹部なはずの紅月茶々乃(こうづき ささの)さんも、ぼくたちのサークル室に入ってきて、 「ムラサキくんやっぱり居たー」 と、からかい混じりの声を発してくる。 「ムラ

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    s-johnny
    s-johnny 2023/12/24
  • 【愛の◯◯】放談の向かう先は - 音楽と本、それからそれから……。

    葉山家を八木八重子(やぎ やえこ)が訪ねてきた。 両親は不在。2人きりでリビングを使い、紅茶を飲みながら雑談している。 「この紅茶美味しいねえ」と八重子。 「G1馬みたいな風格があるでしょ」とわたし。 「……やっぱり出た。競馬の喩(たと)え」 「八重子みたいな一般ピープルでも、明日どんな一大イベントがあるのかは知ってるんじゃないの?」 「知ってるよ。有馬記念でしょ有馬記念。葉山のせいで、12月の第何週が有馬記念なのか、カンペキにインプットされちゃってた」 「八重子~」 「なに」 「イクイノックスのグッズ、欲しくない?? 破格の安値で売ってあげるわよ」 呆れたような顔で八重子は、 「そんなに簡単にグッズを手放しちゃっていいの? 最強馬のグッズなのに」 「ふふーん♫」 「なーにが『ふふーん♫』だか」 「イクイノックスが最強馬、か」 「え、ちがうの」 「まあ、あのジャパンカップでも4馬身程度『し

    【愛の◯◯】放談の向かう先は - 音楽と本、それからそれから……。
    s-johnny
    s-johnny 2023/12/23
  • 【愛の◯◯】ビッグイベントに対処できない - 音楽と本、それからそれから……。

    ベッドに横になりながら、ベートーヴェンのヴァイオリン・ソナタ第5番を聴いていた。 ノックの音。おそらく母がドアを叩いたのだろう。 ドアを開けて母が入ってくる。ノックの意味が無い。 「堕落(だらく)してるわね亜弥(あや)。ダラダラと堕落(だらく)しちゃって……」 少し身を起こしたわたしに洗濯物を渡しながら、 「最近はヒバリのほうがよっぽど真面目に見えるわ。弟に負けてていいの?」 と言い、 「いくら大学に行く必要無い日だからって。早く下(お)りてきて朝ごはんべなさいよ」 と言う。 わたしは時間をかけてベッドから降り立つ。 渡された洗濯物はひとまずベッドに置いておいて、 「まだわたしのほうが『勝ってる』から」 と母に言う。 「ヒバリに、真面目の度合いで?」と母。 「わたしはそう思う」と、ヒバリの姉のわたし。 × × × 朝ごはんが遅かったので、昼ごはんも遅かった。 古屋さんに行きたくて、猪熊

    【愛の◯◯】ビッグイベントに対処できない - 音楽と本、それからそれから……。
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    s-johnny 2023/12/21