中華料理店『幸来軒』が突然閉店した。店の中に耳を澄ませると、ガツンガツンとけたたましい金属音の後ろで大将のブツブツとした声がうっすらと聞こえてくるという。 「いいか、今後一切君らのために鍋は振るわない。チャーハンが食いたかったら冷凍食品をチンすればいいし、天津飯が食いたかったら冷凍食品をチンすればいいし、中華飯が食いたかったら、もうええわ。今時の冷凍食品のレベルなんかエラいことなってるんやから。とにかく俺はもう疲れ切った。毎度毎度、アホ面下げて下品な話ばっかりしくさりよって、なんの未来があんねん。貧乏な学生たちに大量に食わせてやりたくて、みたいな顔しながら鍋振ってきたけどな、嘘やから、あんなもん全部嘘やから。割に合わないから。 俺がもういくつと思う。65よ。65。お前らの45個上。当たり前や思ってもらっちゃ困るから。俺がここでラード炒めてるところ、あんかけ作ってるところ、キクラゲ戻してると
