戦争から帰還した兵士たちの心の傷について、日本で広く語られるようになったのは戦後70年以上経ってからです。その先駆けとなった文学部の中村江里准教授は、当時のカルテや元兵士の家族への聞き取りを通し、丹念な調査・研究を進めています。 兵士のトラウマが本格的に注目されたのは第一次世界大戦のヨーロッパでした。目立った外傷がないにもかかわらず、震えが止まらない、手足が麻痺するなどの症状を示す兵士が急増し、「シェルショック」と呼ばれていました。 私は大学時代、第一次世界大戦期の英国軍の兵士のトラウマをテーマに研究を始めましたが、その過程で「日本兵のトラウマに関する先行研究がほとんどない」と気づいたのです。明治以降、日本は多くの戦争を経験し、日中戦争、アジア・太平洋戦争では兵士だけでも約230万人の死者を出しています。凄惨な戦争を生き延びた日本兵のトラウマはなぜ可視化されなかったのか、彼らは戦後をどう生

