先日の記事で、究極のミステリの指標を示したが、それ以外のミステリはつまらない作品なのか、と聞かれれば全くそうではない。むしろ、多少アンフェアだったり齟齬があったりする作品ほど、感想を書いているとツッコミたくなったり、欠点の影に隠れた美点に気付いたりと、作品個々が持つ独特の面白さを発見することが多い。 これから初めてミステリに挑戦する読者への拙いガイドラインとして、また、自身のミステリへの向き合い方を再確認するためにも、究極のミステリ以外の魅力を2つ挙げておこうと思う。 殺人 物騒なワードが先行して申し訳ないのだが、ミステリでは必ずと言っていいほど事件が起こる。一口に事件と言っても、犯罪性のある窃盗や殺人から、全く犯罪性のない、不可思議な事象や心霊現象のようなものまで様々である。 今回ミステリの魅力として取り上げるのは、事件の中でも最も悪意に満ち憎むべき犯罪である殺人だ。殺人は人が犯す最大の