発表年:1942年 作者:アガサ・クリスティ シリーズ:エルキュール・ポワロ21 訳者:桑原千恵子 前回の記事『書斎の死体』に引き続き、半年ぶりのエルキュール・ポワロは、今まで彼が解決してきた事件とはひと味違う難事件。 なんと16年も前に解決してしまった殺人事件の捜査依頼だったのです。事件の性質に興味を持ったポワロが“過去への後退”を始めるまでは良かったのですが、16年という年月のせいで風化してしまった証言の数々からはたして真相へとたどり着けるのか。 16年も前の事件ですから、いくらポワロの灰色の脳細胞を駆使したとしても新たな物的証拠が見つかる見込みはほとんど0。 だからこそ関係者たちの証言が大きな手掛かりとなるのですが、これはクリスティの得意分野です。 本文のほとんどを占める彼らの証言の中から、食い違いや証言の空白を探し出す作業が結構楽しくて、400頁という腹にたまる物量もくいくいと消化