March 27, 2016 戸田山和久『科学的実在論を擁護する』書評 戸田山和久『科学的実在論を擁護する』名古屋大学出版会 2015 http://www.unp.or.jp/ISBN/ISBN978-4-8158-0801-3.html 本書は戸田山氏による本格的な科学的実在論の研究書である。 まず、日本語でよめる実在論論争史の紹介として、現時点で本書がもっとも充実したものだということは間違いない。20世紀における論争の紹介内容は、シロスのScientific Realism: How Science Tracks Truth (Psillos 1999)という定評ある研究書を下敷きにしていることもあり(これについてはあとで触れる)、信頼性は非常に高い。また、21世紀になってからの動きとして、チャクラバティの「半実在論」(semi-realism)やスタンフォードの「新しい帰納法」など