2021年4月、新型コロナウイルスによる3回目の緊急事態宣言が発令された。走り抜けるフードデリバリー配達員の姿も、すっかり今では珍しくなくなった。色々と批判も多いフードデリバリーだが、雇用の調整弁にされている非正規労働者たちの駆け込み先としての側面があるのは否めない。俳人で著作家の日野百草氏が、失ったバイト収入の代わりにと急遽、配達員を始めた若者の困窮と諦観についてレポートする。 【写真】シャッターに休業の張り紙をした数坪の飲食店が並ぶ幅2m弱の小道 * * * 「バイトが飛んだからやってるだけです。でも稼げませんし辛いですね。店に来る彼らを見てたんで、自分もやってみるかって感じだったんですけど」 東京秋葉原、歩道に佇むウーバーイーツの配達員である彼は地蔵と化していた。地蔵とはデリバリーの指名待ちで店の近くに集まっている配達員のことだが、いつもの地蔵と様子が違う。あきらかに余裕がない。なん