学生時代からバンド活動を続けていた幼馴染の深澤龍太郎が子どもをつくって会社員になったという噂を聞いたとき、淡い感慨を覚えた。この3年間で深澤は結婚して子どもをつくり就社した。僕は結婚したけれど離婚して相変わらずのフリーライター暮らしだ。 【詳細画像または表】 以前だったら、親しい同級生が結婚したりすると「オレのことは放っておく気かよ」という妙な嫉妬と寂しさを覚えたものだ。しかし、30代も半ばになると、人の歩む道はそれぞれなのだという当たり前の事実が身にしみるようになるのだろうか。「あいつはあいつの道を行くんだな」とすんなり受け入れるようになってきた。しかし、お互いにフリーランサーだった深澤に関しては近いものを感じていただけに、遠くに行ってしまった気分は否めない。 1年ぶりに会った深澤は、以前とほとんど変わらず細身の体にぴったりのシャツを着て現れた。所帯じみた印象は受けない。本当に子育