商船三井船舶の差し押さえ事件は、特殊な事例であった。しかし、中国共産党政権がナショナリズムから統治の正統性を獲得しようとする限り、日本企業に対する選択的な法の執行が行われるリスクは消えない。 大阪商船三井船舶貨物船差し押え事件の顛末 2014年4月19日、上海海事法院が商船三井が所有する鉄鉱石運搬船を差し押さえたというニュースが報じられ、その後、4月23日には同社が約40億円もの供託金を同法院に納めて、差し押えが解除されたという。日本さらには一部の中国メディアでも、日中の政府間関係が緊張するなか、いわゆる戦後民間賠償の一環として中国側が日本企業の在華財産を差し押さえたとの報道も見られた。日本船差し押えのニュースが報じられると、中国のネット掲示板には、「日本が中国内に有するすべての財産を差し押さえて、中国侵略に対する賠償に充てるべき」との極端な書き込みも現れたという。 もっとも、中国政府は公