ニューヨークで1日に8000億ドルを動かす仕事から、酒造りの道へ……。静岡県藤枝市にある青島酒造の青島孝専務・杜氏はファンドマネジャーから、家業の酒造りに戻った異色の経歴の持ち主だ。 青島専務の酒造りはストイックを極めている。何しろ、一年のうち半分は蔵にこもっているのだ。眉毛を含めて、ありとあらゆる体毛をそって造りに臨むため、外出もできなくなる。 一日の睡眠時間は3時間程度で、嗅覚が鈍るという理由で、牛肉と豚肉は食べない。テレビや新聞、インターネットなどの情報をチェックする時間は一切ないという。 そして、一年の残り半分は、近隣の稲作農家と一緒に原料米作りを担う。無農薬のため朝早くから毎日、雑草を取りにいく。仕事以外では、ほとんど遠出もしない。この生活を20年近くも続けている。 華やかな海外での金融業務から、酒造り一筋へと生活は一変しても、「まったく苦しくない。楽しくてしょうがない」と笑う。