そりゃまるっきりダメですヨ。 ぜんぜんそんなこと考えられない人でしたヨ。 (藤森照信「焼け跡のプレハブ住宅:前川國男とプレモス」)建築家・前川國男(1905-1986)について、前川建築事務所で働いたキャリアを持つ建築家・大高正人は、こう証言しています。この証言は、戦後日本を代表する建築家・前川の設計による木質パネル量産住宅「プレモス」がなぜ売れなかったのかを語る場面での言葉です。精魂込めて日本の復興を託し設計した「プレモス」は、100万人の住まいをめざした高いクオリティを持ちながら、惜しいことに「売ること」へ関心が及ばず、広く普及することはなかったと語るもの。 同じくプレモスに関わった建築家・田中誠も、次のように証言します。 ああいう量産住宅を工場でちゃんと生産するには毎月必ず一定量の受注が確保されなければいけない。ところが、プレモスには販売体制がないから受注が安定しない。だって、前川さ