昨年の大統領選挙中、日本では、想定されたバイデン政権の対中政策について不安視する声が強かった。日本では、「トランプ政権も案外悪くない」という意見が散見されたが、これは、アメリカが中国に対してあまい路線を取るよりかは、少々粗暴でもタフな対中政策の方がいいという考え方があったからだ。こうした見方は、とりわけ外交安保サークルで顕著だった。トランプ大統領自身に「対中政策」があったかどうかは実際のところかなり怪しいが、トランプ政権の対中政策は躊躇なくタフだった。トランプ政権は、70年代の米中接近以来、基調となってきた平和共存路線を退け、大国間競争の時代であることを明確に宣言した。そのことは、主要政策文書できっちりと明記され、トランプ政権高官も繰り返しそう明言した。 バイデン政権への不安はまったく根拠がなかったというわけではない。バイデン大統領が、8年に亘って副大統領を務めたオバマ政権は、とりわけその