『ピアシングI』より 先月ポレポレ東中野で開催された『中国インディペンデント映画祭』。映画事業が政府の管理下にある中国では、独立系映画をとりまく環境は依然として厳しい。特に、近年は政府が民間の映画祭を中止させるなど、圧力が高まっている。そんな中、独立系映画の最新作を集めた同映画祭では、商業映画からは知ることのできない、生々しい「現代中国の現状」が浮かび上がった。その中でも、中国インディペンデント映画初の長編アニメーションとして話題を呼んだ『ピアシングI』の劉健(リュウ・ジェン)監督にインタビューした。 社会保障と道徳観の崩壊が 複雑に絡み合った事件 ──作品のモチーフになった「彭宇(ポン・ユー)事件」は、どんな事件だったのでしょうか。 ある青年が、道でケガをしたおばあさんを病院に連れて行き、自ら治療費も出して助けたのですが、逆にそのおばあさんに「この男に突き倒された」と犯罪者扱いされて、訴