民族差別などを助長するヘイトスピーチ(憎悪表現)に対応する相談窓口を府が設置して1年。全国初の取り組みとして注目されたが、インターネット上や街宣活動による被害が続くにもかかわらず、相談はまだ1件もない。(山本美菜子) 「全く電話がないとは、想定外だった」 京都弁護士会の浅井亮副会長は読売新聞の取材にそう話した。 府は2017年7月、相談窓口を設置した。月2回の電話相談のほか、対面でも相談でき、人権問題に詳しい弁護士から助言を受けられる。 ただ、16年6月に施行されたヘイトスピーチ対策法では、相談者から要請があっても府が路上での街宣行為を中止することや、罰則を与えることはできない。「結局、自分で訴訟を起こすしかない」(弁護士)ため、相談してこないとみられる。 府は、「在日特権を許さない市民の会(在特会)」による京都朝鮮第一初級学校前での街宣活動(09年、10年)をきっかけに対策に本腰を入れ始
名古屋城木造新天守にエレベーターを設置しないことを決めた名古屋市が24日、代替案とされる新技術を障害者団体に説明した。4企業が実績や構想を披露したが、障害者側は「求めているのは技術の発展ではなく、誰もが上れる権利だ」と納得しなかった。 今回紹介したのは、二足歩行ロボット、障害者も乗れる「かご」、介助者支援のパワードスーツ、階段昇降機の4技術。かごは市が当初示した11案になかった案で、自動車部品製造で培った技術で軽量化するなどして「段差を容易に超えられる」という。 これに対して、障害者からは「車いすの人が違う物に乗るのは皆さんが思う以上に負担だ」「(新天守完成までの)4年間で開発が進むのか」といった疑問が相次いだ。出席者の一人は終了後、「エレベーターも新技術の選択肢に入れてほしい」と話した。 障害者からは、69歳の河村たかし市長自身が「急な階段を最後まで上りきれるのか」との質問も出た。河村市
外国人にもわかりやすい「やさしい日本語」で、避難所での生活情報を伝えられるポスターがインターネットで公開されている。作成した弘前大学の佐藤和之教授(社会言語学)は「外国人だけでなく高齢者や子どもにも分かりやすい表現」と活用を呼びかけている。 「やさしい日本語」は阪神大震災をきっかけに、命を守るための言葉として佐藤教授らが作った。当時、災害情報から取り残された外国人が多く、死傷率が日本人より高かったという。 今回の豪雨災害で、インターネットサイトへのアクセス数は通常の2~3倍に。西日本からが目立っており、外国人向けの支援情報が求められているようだとしている。 ポスターは、避難場所や病院で使える「ライフライン」、「飲食物・日用品」、「病院・健康」、「衛生・避難所生活」について、豊富に言葉をそろえている。 「水(みず)を 無料(むりょう)で もらうことが できます お金(かね)は いりません」、
宮城県内のタクシー乗務員が障害者を乗せる際に、障害者手帳などに記載された個人番号などを記録するケースがあることが分かった。県タクシー協会(仙台市若林区)は、個人情報の不適切な収集に当たる恐れがあるとして、記録をやめるよう加盟全183事業者に周知する方針を決めた。 障害者は身体障害者手帳や療育手帳を提示すれば、タクシーの乗車料金が1割引きされる。協会によると、事業者の一部は「本人確認のため」などとして乗務員に手帳内容を記録させていたという。 手帳には心身の状態など高度な個人情報が書かれている。今月、仙台市内の障害者から「不要な個人情報が収集され、流出が心配」などとする訴えが、協会や東北運輸局に寄せられた。 運輸局によると2008年、全国で個人情報の取り扱いに関する同様の苦情があったとして、手帳の顔写真の確認にとどめるように求める通知を協会や事業者に出した。 だが、協会によると通知を守らずに記
「レゴランド・ディスカバリー・センター東京」(東京都港区)を訪れた聴覚障害の4人が、聞こえないことを理由に入館を断られていたことがわかった。国は「障害者差別解消法の禁止事項に当たる」とし、施設側に改善を求めた。運営会社は「大きな過ちを犯した。深くおわびする」としている。 入館を断られたのは、新潟県に住むろう学校教員でろう児支援団体代表の阿部光佑さん(31)。4月21日の土曜日、家族などで楽しもうと、息子(3)と娘(6)と友人の計4人でレゴランドを訪れた。入り口でスタッフに呼び止められ、「聞こえる方はいらっしゃいますか? 聞こえる人が付き添わないと入館はできません」と筆談で伝えられた。4人とも聴覚障害があるため、理由を聞くと「災害時に避難の呼びかけに応じることができないため」と説明された。子どもたちは「ほかの子は遊べるのに、なんで自分は入れないの?」とショックを受けた様子だったという。 施設
DVやストーカー、児童虐待の被害者らを保護するため住民票の交付を制限する「住民基本台帳制度に基づく支援措置」の運用が自治体で異なるとして、DV問題に取り組む一般社団法人「エープラス」(東京都)が13日、統一の手順を定めるよう総務省と内閣府に要望した。被害者の住所が加害者に漏れると殺人などの事件に発展する恐れがあり、専門家は「国は手順を詳細に示すべきだ」と指摘している。 支援措置は、自治体が被害者からの申請を受け、加害者本人や加害者から依頼を受けた弁護士らに対して住民票の交付などを制限する制度。総務省によると、対象者は昨年12月現在で11万7971人に上る。制度開始から14年たったが、住民票の交付を請求する弁護士らが加害者と関係ないことを確認する手順などはいまだに統一されていない。
訪日外国人客の医療費未払いが相次いでいる問題で、政府は14日、総合対策を公表した。訪日客の受け入れに関する医療機関向けのマニュアルを今年度中に作成。未払い歴のある訪日客に対し再入国を拒否するといった厳格な方針も打ち出したが、意思疎通に難がある訪日客への医療通訳が不足しているという課題もある。 訪日客が増える中、医療機関でトラブルが増えていることから、政府は3月、内閣官房を中心に厚生労働省、法務省、観光庁などでワーキンググループを設置し、旅行、保険などの関係業界からヒアリングした。 対策では、訪日客とのコミュニケーション不足を解消するために、医療コーディネーターを養成するほか、医療通訳の認定制度を来年度に試行することが盛り込まれた。 平成27年度の厚労省の調査によると、医療通訳を利用したところは約13%にとどまる。医療通訳の配置に一人当たり年間2千万円前後の費用がかかることもあり、通訳の配備
全国各地に4209棟ある精神科の閉鎖病棟のうち、139棟には厚生労働省が設置を求めている公衆電話がないことがわかった。厚労省は「患者が自由に電話できる環境であることは重要で、100%の設置を目指して指導していきたい」と話している。 精神保健福祉法に基づく厚労省の告示は、「電話機は、患者が自由に利用できるような場所に設置される必要があり、閉鎖病棟内にも公衆電話等を設置するものとする」と定めている。患者の人権や憲法で定める「通信の自由」を保障する意味合いがあるという。 厚労省は、精神保健にかかわる調査を毎年6月30日付で実施。今春に公表された2017年の調査結果によると、終日閉鎖されたままの病棟は4209棟あり、うち139棟に電話が設置されていなかった。閉鎖病棟が3763棟だった07年の調査では、128棟で設置されていなかった。13年に設置されていない病棟は48棟まで減ったが、その後再び増えて
本庄市は6月1日から、全国初の成年後見制度に特化した電話相談「後見ほっとライン」を開設、運用を始める。制度を熟知した専門のオペレーターが成年後見の必要性の査定などきめ細かく対応することで、気軽に相談しやすいような環境を整える。市は相談実績などを踏まえ、来年度以降の本格実施を検討する。 この事業は市と綜合警備保障、一般社団法人「後見の杜(もり)」が協働で実施。綜合警備保障などは群馬県の富岡甘楽圏域(富岡市など4市町村)でも同時にスタートする。 成年後見制度は、認知症や知的障害などで判断能力が不十分な人の財産管理などを弁護士などが後見人として支援する。ただ、制度自体が分かりにくく、個人情報も絡むことから、市がこれまで実施してきた窓口での対面式の相談件数は年10件程度にとどまっていた。 後見ほっとラインは、オペレーターが成年後見制度を熟知しており、制度の説明や成年後見の必要性に加え、金銭トラブル
「はじめまして!」 弾けるような笑顔とまっすぐな目でこちらを見据える。大橋グレース愛喜恵さん(29)。多発性硬化症と重病筋無力症、シェーグレン症候群という3つの難病を抱える。だがNHK Eテレの福祉バラエティー番組「バリバラ」にレギュラー出演し、講演のため全国を飛び回るその姿からは、24時間体制の介助を必要とする難病患者というのが到底信じられない。 1988年、日本人の父とアメリカ人の母のもと、福島県で生まれた。本やバスケが大好きな活発な少女は、中学3年の秋に始めた柔道にのめり込み、高校生になると渡米。北京オリンピックのアメリカ代表候補に選ばれるまでになる。 時を同じくして、身体に謎の異変が起きる。渡米前に左目、渡米後に右目の視力が弱まり、腕もしびれて力が入らなくなっていた。「私の身体に何が起きているんだろう」。一時帰国して検査を受けると、神経の機能に異常が出る難病と診断される。短期間の検
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