トコベイ人形を初めて見たとき、私はとっさにシュメール人を想起した。 (トコベイ人形) (Wikipediaより、シュメール人礼拝者の像) 思いきって眼が大きく、何を考えているかわからない、無性に不安を掻き立てさせる漆黒が瞳の奥に蟠っているあたり、よく似ていると今でも思う。 が、シュメール人がそのほとんどオーパーツ的な高度文明を建設したのはユーラシア大陸のど真ん中、ティグリス・ユーフラテス川流域に対し、トコベイ人が棲息するのは西太平洋の波濤が洗う、小さな――まことに小さな、総面積1㎢未満の――珊瑚島に過ぎないのである。 両文明に交通(いきき)があろうはずがない。 偶然の一致に過ぎないだろう。 (Wikipediaより、トコベイ島北西部) この人形には、また面白い経緯(いきさつ)がある。 オリジナルがあったというのだ。 見上げるばかりの巨大さで、島民たちから御神体として祀られており、その霊威に