『伊勢物語』は、平安時代の、9世紀から10世紀にかけて作られた歌物語です。奔放な人生を送ったと伝えられる天才歌人・在原業平(ありわらのなりひら、825年〜880年)をモデルに、恋愛や交友、また失意の流浪や遊興など、さまざまな内容が、和歌を中心に語られています。 現在普通に読まれている本は125段の章段によって構成されていますが、これらの段は一度に作られたのではなく、50年以上の間に、複数の作者によって、次々と新しい段が加えられ、現在の姿になったと考えられています。 『伊勢物語』は、当時の人々から高く評価され、紫式部の『源氏物語』にも大きな影響を与えています。それから現在まで、約千年のあいだ、『伊勢物語』はそれぞれの時代の人々に愛され、さまざまな形で、熱心に読まれ続けてきました。 当初、『伊勢物語』は、手で書写された本、すなわち写本の形で読まれていました。そこに手書きの絵を加えた、いわ