日食は、世界中のどこかの場所では毎年見られる現象であるが、見られる場所が限られているので、場所を限定した場合には珍しい現象になる。日食は天文現象の中では見てわかりやすい現象であり、急激に暗くなったり、温度が下がったりと、不気味さがともなうことで、古くから知られており、多くの記録が残っている。 一方、暦法の進歩にも日食は大きな意味を持っている。太陰太陽暦法では、月の運行と太陽の運行を組み合わせることによって、暦は作られた。日食は太陽・月・地球が一直線になった時、月が太陽を覆い隠す現象である。太陽と月の運行を十分な精度で予測できなければ、暦に書かれた日食の予報は外れることになる。江戸時代に用いられた貞享暦法、宝暦暦法、寛政暦法での日食についての記事を見てみよう。 『貞享暦』 渋川春海著 7巻7冊 渋川春海の作った貞享暦法は初めての日本暦法であった。その貞享暦巻二で、過去の日月食の記録と各種暦法