(前編から続く) もともと物理学に興味を持っていたという岡野栄之・慶應義塾大学医学部教授は、なぜ医学の道へ進み、iPS細胞研究の第一人者になったのか。日米を中心に激しいiPS細胞研究が展開されるなか、日本がその競争に打ち勝つにはどうすべきか、などについて話をうかがった。 インタビュー/長坂邦宏 nikkei BPnet編集 文・構成/宮島 理 写真/中野和志 大学で勉強したかったのは理論物理学 ――高校時代は物理学にご関心があったそうですね。物理学を志していたところから、どのようにして生命科学の世界へと足を踏み入れるようになったのですか。 岡野栄之教授(以下、岡野) 私は中学の時から物理学には興味を持っていて、将来はそちらの方向に進みたいと考えていました。数学が得意で、アインシュタインに憧れていたんです。 高校は慶應の附属高校に入ったのですが、進学先として慶應義塾大学を調べてみると、物理学